「夏祭浪花鑑」

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文楽!夏休み文楽特別公演ということで三部制、第三部18時開演の公演が「夏祭浪花鑑」ときたら、これほど絶好の文楽デビューチャンスないっしょ!というわけでチケット取っていってきました*1。いや実は文楽好きの方からしたら「おまえその距離に住んでてなんで今まで行ってない!?」ってなるぐらい、国立文楽劇場の近くに住んでいる私…そんなもんよね…。

チケット取るにあたって参考にさせていただいたブログがこちら。
yomota258.hatenablog.com
座席からの見え方とか、雰囲気とか、このページ以外にも人形遣いの皆さまの紹介とか、過去にご覧になった「夏祭」の感想とか(団七サイコパス説、むちゃくちゃ笑った)、とにかく読み応えありまくり!これほど手ほどきとして優れたサイトはなかなかないのでは。

さすがに歌舞伎であれだけの回数見てるので、イヤホンガイドなくても大丈夫だろうと思って借りませんでした。セットも基本的に歌舞伎と同じ、見慣れたもので、人形がやるのでもちろん大きさは違うんだけど、うおお、同じやん、という妙な感動がありましたね。

歌舞伎では見せ場になっているようなところがなかったりして、おお、ここはある、ここはない、と違いを楽しみながら見ました。お辰の「こちの人の好くのはここじゃない、ここでござんす」はなかった!そうなのかあ。文楽では歌舞伎ではほぼかからない四段目(道具屋)と五段目もちゃんとかかるからか、三婦内での三婦の台詞が剣呑ですごい(磯之丞の殺人の隠ぺいを前提に話しているため)。鳥居前での展開もむちゃスピーディーで、逆に歌舞伎では役者さんを見せようとしていろんなおかずを多くしてるんだなというのもわかって面白かった。

始まる前にとざいとーざい、の東西声があって太夫と三味線の紹介があるのがすごく雰囲気があって高まったなー。そして三婦内で出てらした太夫で出てきた瞬間思わず素で二度見するほどの男前がいらして、そしていうまでもなく声がバリ良しなので、いやなんという…至福…とちょっとうっとりしちゃいました。しかし太夫の語りはすごい!あの声音の使い分けもさりながら、声の響きの良さ、わかりやすさに聞きほれる感じ。

圧巻だったのはなんといっても長町裏で、義平次と団七の掛け合い、団七が耐えて耐えて耐えて、その苦悩が人形から浮かび上がってくるところ、その堪忍のすえの「コリャコレ男の生面を」に湛えられる憤怒。いやー見応えありました。ついに手をかけてしまう団七に思わず涙がこぼれ、しかし私はどうして、この悪辣な義理の親父にいたぶられてついに堪忍袋の緒を切ってしまう殺人の話がこんなに好きなんだろう…と自問自答してしまうほど、のめり込んで見ました。

たぶんその理由のひとつには、この殺人が華やかな真夏の祭りの裏で行われていて、あの祭りの鉦の音があの場に常にあること、その対比からくるドラマ性、そういうものがほんと、「刺さる」ってやつなんだろうな~。義平次を沼に沈めるときとか、人形ならではの勢いのよさ(マジで投げ込む)も面白かったし、祭りに紛れて立ち去る団七が赤い手ぬぐいを頭に巻くのも、ポイントオブノーリターンの徴のようでいい演出だなーと思ったり。長町裏はなんか、人形遣いと人形というよりは一体のものとしてのめり込んで見てしまいましたね。また劇場のある場所がほんと、すぐ近くに高津宮があって、この作品をかける劇場としてこれ以上の場所はないって感じですものね。

歌舞伎ではなかなかお目にかかれない演目とかを文楽で見てみるというのも面白いのかもなー。いい初体験でした!