「夏祭浪花鑑」

コクーン歌舞伎に三度参上、の「夏祭」。串田演出バージョンとして数えたら私が見るのはもう何回目だ?覚えてない。ドイツとルーマニアでの公演が5月にあって、その凱旋公演という形になるのかしら。パンフレットにあった簡単なレポを読むと、ルーマニア・シビウでの公演は見逃したのがやっぱり悔やまれる感じ。

今回、今までの公演といちばん違うのは多分スピード感です。早い!台詞の間も極力詰めているし、釣船三婦内の場への転換も極力短縮(だから大道具が家を建て込まない)、冒頭の獅子舞の場面もカット。獅子舞が最初の喧嘩のシーンで出てきたのはそのためだったか・・・

スピードは上げているけれど、それでわかりにくくなっては元も子もない、という配慮もちゃんとあって、端々に場面の展開をフォローする台詞があったのも心配りだなあと思いました。

さてさて、今回初役の勘太郎くんのお辰。いやー・・・緊張したわ!(笑)俺が緊張してどうするって話だけど、でも勘太郎くんも緊張してたと思うよー。いつもと違うところに力が入ってしまっているのか、彼独特の柔らかさがあまり生きていなくて、声もいまいち通らなかったです。まあ、やっぱり荷が重いか!まだ!という感じはした。「立たぬぞえ、立ちませぬぞえ」のとことか、三婦の「そなたの顔に色気があるゆえ」の台詞のあとの芝居に厚みがないというか。とはいえ、鉄弓を頬に当ててからの芝居はがっつりもっていった感じはあって、ほっとすると同時に、抑えの芝居ってのは難しいんだなあ〜〜、とそんな当たり前のことも思ったり。

そんな勘太郎くんは幕開きの口上と、あと最後の大捕物でも姿を見せてくれて、なかなかに出ずっぱりであったことだよ、うんうん。

勘三郎さんの団七、橋之助さんの徳兵衛はもう盤石といったところ。あとそうだ、細かい話だけど鳥居前でお梶がふたりの喧嘩をとめるところ、今まで床屋の看板だった気がしましたが今回は傘でしたね。ってどうでもいいですか、すいません。

しかしこの夏祭という芝居に自分がここまで惹かれてしまうのは、突き詰めるとあの長町裏の幕切れ、面明かりの蝋燭が燃え上がった瞬間に幕が落ちて、眩しいほどの光がなだれ込んでくる、あの一瞬にあるのかもしれないなあと思う。あれこそまさに「劇的なる瞬間」であって、何度見てもやはり肌が粟立つような興奮を覚えずにはいられません。

以下ちょっとラストのネタバレ。
そして毎回話題になるラストの仕掛けですが、今回はドイツ公演バージョン!ということで、ベルリンの壁でした。うははは。毎回毎回考えるなああ!!現地ではウケたのかな、きっとウケたと思うんだけど(笑)

コクーンの次は松本ですね。劇場が串田さんお膝元でもあるので、趣向を凝らしてくるのでは?と楽しみにしております。