ジェシー・アイゼンバーグの製作・脚本・監督・主演。ベンジーを演じたキーラン・カルキンが本年度アカデミー賞助演男優賞受賞、ジェシー・アイゼンバーグも全米批評家協会賞や英国アカデミー賞で脚本賞受賞、おめでとうございます!
予告編を見たときに「好きそうな映画」と思って「見に行くリスト」に入れてあったんだけど、期待に違わず良い映画でした。祖母の遺言を守りかつて暮らしたポーランドの街を訪れる若者ふたりの心の機微というテーマを、ポーランドにルーツのあるアイゼンバーグが撮ることでその土地への敬愛がつまったものになっていて、それがこの映画の品を担保しているように思います。
デヴィッドがベンジーへの複雑な思いを吐露する場面、よかった。デヴィッドからすればベンジーはすべてを持っているひと、こんなふうになれたら、自分の人生の大部分を捧げてもいい、と思える人なのに、そのベンジーは生きて前を向くことに倦んでいる。忖度せず空気も読まず、でも最後には誰よりも皆に愛されるベンジーを、デヴィッドは憎みながら愛していて、彼にどうにか「人生をやっていく」方法を見つけてほしいと思っているし、もしかしたらポーランドで見た様々な光景が、どこかでベンジーの背中を押すかも、と思えるラストシーンだったと思います。
キーラン・カルキンが素晴らしいのは言わずもがな、ジェシー・アイゼンバーグもやっぱり飛び切りの俳優だなあと思ったなあ。あの夕食で堰を切ったように語りだす場面、私はああいうのにとても弱い。
ポーランドの街並みが実に魅力的に撮られているのも素晴らしかった。だからこそマイダネク、ルブリン強制収容所の内部の映像のショッキングさを、あのツアーの参加者と同じように体験した気がして、観客がそう感じることも監督の願いのひとつだったんだろうなと思いました。