「人形ぎらい」

三谷文楽第2弾。「其礼成心中」からも13年かあ。今回は文楽の「人形」たちを主人公に…って、いやそりゃ文楽なんだから人形が主人公に決まっとるだろと言われそうだけど、もっとメタに、役ではなくて「遣われている人形」そのものが主人公。タイトルはモリエールの「人間ぎらい」のもじりだね。

文楽で使われるかしらの中で、嫌味な小悪党をやる「陀羅助」が、毎日毎日繰り返される芝居の中で常に憎まれ役をやらされることに不満が爆発してしまう、というのが話の発端で、同じくかしらの源太や老女方たちと侃侃諤諤、しまいには劇場を飛び出して「ここではないどこか」に向かおうとするという、かなりスラップスティックなコメディになってました。

三谷さんは「大地」のときもそうだったけど、舞台を成立させるのには観客という要素が不可欠である、ということをよくモチーフにされますよね。今作も、いつもの席に座っている、いつもの観客が陀羅助の心を変えたりするところ、やっぱり舞台の人だなあと思わされます。

楽屋に仕舞われている間の人形同士の会話でのおかしみや、後半の活劇めいた展開まで、本当に「人形にできないことはない」を体現してるし、これは「其礼成心中」のときもそうだったけど、見ているとだんだん「人形を見ている」という感覚が希薄になってくるところがすごい。

あとこれは作品に関係ないですが、久しぶりのPARCO劇場で、本当にこの劇場は見やすくて…好き!と改めて思いました。理想のサイズ感だよなあ…!