「フォードvsフェラーリ」

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ジェームス・マンゴールド監督。業績不振にあえぐフォード社はモータースポーツ界で名をあげるフェラーリ社の買収に乗り出すが、失敗。フェラーリ社への雪辱に燃えるフォードは、自社で開発したマシンでル・マン制覇に挑む…という、実話をもとにした物語です。

題材が題材だけにいい音響といいスクリーンで見た方がいいだろうなという気がして、公開週末にドルビーシネマで観ましたが、何に驚いたって男性客の多さ!自分がモータースポーツにあまり執心したことがないというのもあって、熱いファンがやっぱりたくさんいるんだなー!と思いました。

すごく面白かったんですが、見ていて気がついたんですけど私って速い車が苦手なんだったんだていう…じゃあなんで見に来たんだよって話なんですけど。スピードにスリルを感じるよりも前に恐怖を感じてしまうんだね!なのであまりの臨場感に映画のかなりの部分めっちゃ歯を食いしばって見てたみたいで、終わったあと顎が疲れました。ル・マンの名前は知っていましたが、そして24時間走るというのも知っていましたが、あんなスピードで3分半のラップを刻み続けるの?正気の沙汰じゃねえ!と改めて彼らの超人ぶりに震撼しましたね。

GT40という車をフォードが開発していく過程をやるだろうと思ってたらそこを潔くすっ飛ばして、フォードvsフェラーリっていうタイトルだけどフェラーリが噛むのは物事の発端のところが主で、基本的にはフォード内部の権力闘争と、「事件は会議室で起きてるんじゃない!サーキットで起きてるんだ!」みたいな現場vs管理職がメインストリームで、またこの争いが、たぶん仕事をしている誰もが一度は思ったことがあるであろう「じゃあお前がやってみろよ!」を地で行く管理職の管理職ぶりに、どうやっても観客は主人公のキャロル・シェルビーとケン・マイルズの肩を持ってしまうっていう。真の敵はフォードというか、むしろフェラーリ側は潔さもあって好印象な描かれ方ですよね。

7000回転の究極の世界を見たシェルビーは、持病でその道を突然に絶たれるわけだけれど、自分と同じように車を見ることができて、自分と同じように車を走らせることができるマイルズに自分の何かを託していることは間違いなく、そして口には出さないまでもマイルズもそれをわかっているんだろうと思う。でもその中で「大人の論理」をシェルビーが汲んでしまうのも、結局のところこれはフォードに全権が握られた戦いであるからなんだろうな。彼はこの世界から離れられない。そしてマイルズも、7000回転の究極の世界から離れられない。

しかしシェルビーとマイルズのあの「仲良く喧嘩しな」はなんなんや…缶詰で殴ろうとしてパンに持ち替えるし…じゃれ合うな!マイルズの奥さんの高みの見物最高でしたね。っていうかマイルズの奥さん終始最高だった。普通なら愁嘆場になるところをマイルズを助手席に乗せてかっ飛ばして吐かせるって素晴らしいでしょ。レースに出るならしっかり稼いでこいっていうあの姿勢もよかったなー。そういえば息子ちゃんは「ワンダー 君は太陽」のオギーのお友達のコだったね。

リー・アイアコッカジョン・バーンサルが演じていて、そういえばうちにアイアコッカの書いた本あったな…と懐かしく思ったりしました。わりと伝説的な経営者ですよね。クリスチャン・ベールは毎回風貌が違うので素顔がわかんなくなりそうになりますが、今回の役はかなり人間味あふれる役で好きでした。最後の展開も予想はつくものの、そのあとマット・デイモン演じるシェルビーから漂う喪失の影に胸が苦しくなるし、このふたりでル・マンのトロフィーを掲げるところを見たかったなと思ってしまいます。

「エクストリーム・ジョブ」

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確かどこかの映画館で予告編を見かけて、面白そうだな…と思った記憶があるんですが、公開されたらちゃんと周りでおススメしてくれる人が続発して忘れずに見に行けました。監督はイ・ビョンホン

いやー面白かった!むちゃくちゃ笑いました。どのシーンでもきっちり笑わせてくれる一方、アクションシーンの緊張感もしっかりあって二度美味しい。何より、脚本がほんとにいい!麻薬捜査班としてうだつの上がらないチームが、犯罪組織のボスを張り込むうち、ひょんなことから始めることとなったフライドチキン屋が大繁盛…ってそれだけで魅力のある出発点だけど、刑事とチキン屋の二足の草鞋の描き方、チキン屋のバズり方、次第に「金に稼げる方」に傾くチーム…これらすべてが愛嬌たっぷりに描かれててすごく楽しいんですよ。カルビ風フライドチキンめちゃうまそうだもん。あと私がすげえなって思ったのは、彼らが本来の「刑事としての仕事」に目覚めるのが正義心からとかじゃなくて、フランチャイズ店の商品とサービスの調査から(ここの作戦会議が一番刑事らしいのマジで笑う)っていうのが素晴らしいなと。お金はほしい、妻はこわい、でも悪行を見つけたからにはしっかり仕留めます!っていう、人間らしさしかない爽快アクション活劇!

5人の刑事それぞれのキャラの立ちようも最高で、開始10分で観客の中で確立されちゃう感じですよね。マ刑事、よかったな~。絶妙にいらっとくる立ち回りなんだけど、愛せちゃう何かがある。チャン刑事とのラスト、あれを周りのみんながほっこり見つめるとかじゃないのもよかった。息も絶え絶えの「撃て…!」笑いました。笑いました。ジェホン&ヨンホのコンビ、最終決戦前のふたりがあの「ステイ、ステイ」「GO!GO!GO!」のイラストそのまんまだったですよね。

韓国で歴代最高興収をあげたそうで、ハリウッドリメイクも決定しているそう(いやいかにも目ぇつけそうだわ)。こういう映画が最高興収叩き出すってすばらしいな!

「テッド・バンティ」

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シリアルキラー」の語源ともなったアメリカの連続殺人犯「テッド・バンティ」を描いた映画。原題が"Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile"「極めて邪悪、衝撃的に凶悪で卑劣」。実際に死刑判決を受けた裁判における裁判長の発言からの引用だそう(映画の中ではジョン・マルコヴィッチが演じています)。監督はジョー・バリンジャー。

彼がなぜシリアルキラーとなったのか、なぜ女性を殺したのか、なぜあれほどまでに残虐なことができたのか、なぜ…という、彼の内面をさぐる、または類推するような描き方は一切していなくて、カメラが映し出すのは「同時代にいた第三者」からの視線。そこがなんともいえないリアルさをもってせまってくる。もちろん、恋人であったリズの視線が大きいですが、リズを離れて映画が描くものもあるので、やっぱり第三者から見たという視線が絶対あると思う。

バンティしか知らないことは基本的に映画でも描かれないので、確かに途中までは、これがテッド・バンティを描いた作品で、その人物が何をやったかを事実として認識していても、「自分がこの映画の時間軸の中にいたら、この人を凶悪殺人犯と思うだろうか」っていう揺らぎを起こさせる。映画を普通に見ていると、突然警察に捕まり、保釈されず、わけがわからないうちに極刑にまで話が及んでいるようにさえ見える。そのことに戸惑いさえする。それぐらい、ザック・エフロンが作り出すテッド・バンティが魅力的とも言える。そして、それが心底、おそろしい。彼のやった凶悪な犯行そのものもだが、私たちはそれを見抜くことができないという事実がおそろしいのだ。

しかし、二度も脱獄し、あれほどまでに過剰な「裁判ショー」を繰り広げていたとは知らなかった。そして脱獄という事実をもってしても(つまり自分は今逃亡犯で文字通り崖っぷちに立っているにも関わらず)女性を襲い、殺し、強姦しないではいられなかったとは。リズとの最後の面会、エンディングの本人映像にマジで削られます。ここまでのシリアルキラー、しかも犯行のすべてを告白したわけではない男、その人物が実際に話すあの短い時間でそれにあてられてしまうというか。

帰宅したらちょうどゴーン被告のレバノンでの記者会見のニュースが流れていて、それについていろんな人が気ままにいろんなことを言っていて、こうしたニュースをショーとして消化してしまうってことについて考えずにはいられませんでした。

「ジュマンジ/ネクスト・レベル」

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大大大ヒットした2年前の「ジュマンジ ウェルカムトゥジャングル」続編です!キャストも変わらず。監督も引き続きジェイク・カスダンがつとめています。

物語の構造は基本的に同じで、今回はNYでの大学生活に疲弊したスペンサーが、順調にやっている(ように見える)仲間や彼女に気後れし、この世界のどこにもボクのいる場所がない→そうだゲームの世界に行ってロック様になっちゃおう!というのがすべての発端。スペンサーを助けるためにゲーム世界に飛び込むマーサやフリッジ、取り残されるベサニー、巻き込まれるおじいちゃんズ…といったところ。ジュマンジの世界にいったあとは基本的に前回と世界のルールが同じなので、そういう意味でも前作の踏襲感が強い。それが悪いってわけじゃなくて、あれだけ成功したフォーマットなんだから、そのフォーマットを活かさない手はないっていうのもよくわかる。

しかし、構造が同じだからこそ、前回の脚本の完成度に比べると雑さを感じるのも否めないところですよね。特にジュマンジでのライフの使い方。有限のライフをどんなふうに消費するのか(そして追い込まれるのか)っていうのがこの世界線でのスリルを決めているので、ばかばかしい消費もインパクトとしてあっていいけど、こなしました!感が強めに出ちゃうところも多分にあり、難しい所だなと思いました。

「中の人」については、ダニー・デビートなロックさまも楽しかったし、ダニー・グローヴァ―なケヴィン・ハートもよかったんですが、ことこれに関してはジャック・ブラックの独壇場といってよく、その証拠に入れ替わりも含めて3人の「中の人」を託されているんですから、観客もこれを待っているし制作側もばっちりこれに応えるっていう幸福な図式。しかし、ベサニー登場できゃーやっと戻ってきたー!と思わせるジャック・ブラックさすがすぎる。

スペンサーの最初のアバターをやっているのがオークワフィナで、喘息の薬っていうわかりやすい小道具はあるにしても、それ抜きでもあっこれスペンサーだな…とわかるキャラづくりもよかったです。最後のおじいちゃんズのバディコンビも、オークワフィナの明るさを失わないトーンの芝居が効いてましたよね。

ラストの引きを見ると次も考えてるのかな~と思うけど、さすがに次はゲーム世界のルールに改変があったほうがいいんじゃないかって気がしますが、どうなんだろう。ジャック・ブラックの輝きはいつまでも見ていたいです!

30年の30本

はじめに

Twitterで年末になると今年のベスト3、みたいなお題をよく見かけますが、その中に「2010年代のベスト10」をやってる人がいて(映画だったけど)、2010年代っていうDECADEくくりでベスト10やるの面白いかもな、どうせなら90年代、00年代、10年代でやってみようかなという思いつきでスタートしました。最初は今までの自分の感想遡って読もうかと思ったんですけど多すぎて無理だった(計画性ない)。特に本数の増えた2003年頃からは基本的にその年のベストで選んだやつから選抜しました。順位はつけないでいこうかとも思ったんですが、こういうの順位つけたほうが面白いよねと思ってがんばってつけてみました。とはいえ1~3位ぐらいはわりと確定的ですが、それ以外は今の気分という感じですね。

あと、私が芝居を観始めたのは80年代の終わりなので、それはどうしようか…と思ったんですけど、この際1988年の第三舞台「天使は瞳を閉じて」と、1989年の夢の遊眠社「贋作・桜の森の満開の下」は殿堂入りということで外しました!いやこの2本はオールタイムベストやっても絶対入っちゃう2本だからさ!なので今回は純粋に10年縛りということで、ではいってみよっ!

1990年代ベスト10

  1. 髑髏城の七人(1997年)
  2. 朝日のような夕日をつれて‘91(1991年)
  3. 彦馬がゆく(1993年)
  4. 夜明けの花火(1990年)
  5. 赤鬼(1996年)
  6. じゃばら(1997年)
  7. 12人のおかしな大阪人(1995年)
  8. KNIFE(1995年)
  9. 休むに似たり(1998年)
  10. 直撃!ドラゴンロック2(1999年)

10位からいきましょうか。新感線おポンチの最高傑作ですね。すべてが奇跡。9位は自転車キンクリートのゴールデンコンビ、飯島早苗鈴木裕美の二人が手がけた中でも印象深い作品。佐藤二朗さんはこの作品でTVプロデューサーの目に留まったんじゃなかったかな。8位は惑星ピスタチオの作品の中でも最も好き、今でも台詞を諳んじるくらい好きな作品です。戯曲の構造が完ぺき。

7位はプロデュース公演のはしりといってもいいですが、文字通り関西でぶいぶい言わしていた劇団の売れっ子を集め、かつ脚本も演出も美しくまとまるという。このあと第2弾、第3弾も作られましたよね。6位は遊気舎の伝説的な作品の再演で、文字通りそのチラシの煽り文句に引っ張られて観に行きました。後藤ひろひと大王の過去作をパルコプロデュースでリメイクしたのが沢山ありますが、じゃばらを手掛けてほしいような、そっとしておいてほしいような複雑な気持ちでしたね、当時。5位は今はなきパルコのスペースパート3で観た思い出が。遊眠社解散後、NODAMAPに対してこじらせ気味だった私ですが(そうなの?)、このNODAMAP番外として公演された赤鬼で「こんなの作られたらもう降参するしかないっす」となったもんです。

4位はCカンパニープロデュースの作品で、往年のつか戦士そろい踏みだったんですよね。今考えるとこれを近鉄小劇場で観られてるの夢のようだな。これベスト1にあげてもいいくらい好きな作品です。4位になってるのはその後の観劇人生への影響を考えると上位3作品に一歩劣るかなと思ったからなんですが、しかし作品としては今でもラストシーンがはっきりと眼前に浮かび上がるくらい、思い出深いですね。3位は東京サンシャインボーイズの公演で、今でも私の三谷幸喜ワークスベスト1です。この作品がなかったら私はたぶん三谷さんにここまで思い入れてないんじゃないでしょうか。戯曲の構造、歴史上の人物に対する切り口、歴史そのものに対する深い愛情、どれもがすばらしかった。あの大崩しは生涯忘れられないラストシーンのひとつ。

2位はいわずもがな、第三舞台の名を知らしめた作品ですよね。多分私の人生において最もチケットの取れない演劇公演で、それを勝ち抜き、実際に東京まで出かけてこの伝説の場に立ち会えたこと、立ち会った伝説が伝説以上であったこと、私の観劇における「かっこよさ」の結晶のような舞台であったことなど、これ以上の「体験」を超えるものはないんじゃないかと思うほどです。

そして1位は劇団新感線の文字通り金字塔と言っていいんじゃないでしょうか。ひとはだれでも最初に見た髑髏城を親と思う現象があるらしいですが、だとすると私にとって不動の親ですね、1997年が。こののち生み出される新しい「髑髏城」の基本形はほぼここから出発しているといってよく、かつ劇団員の力量、スタッフワーク、それらがいのうえさんの構想に追いついてきた時代でもありました。紛うことなき傑作中の傑作ですし、この作品が押し開いた扉はあまりにも大きかったと思います。

2000年代ベスト10

  1. 夏祭浪花鑑(2002年)
  2. 野田版・研辰の討たれ(2001年)
  3. 阿修羅城の瞳(2000年)
  4. タンゴ、冬の終わりに(2006年)
  5. 消失(2005年)
  6. 農業少女(2000年)
  7. オケピ!(2000年)
  8. 籠釣瓶花街酔醒(2005年)
  9. ハムレット(2004年)
  10. 五右衛門ロック(2008年)

年代が進むほどベスト10選ぶの難しいですね。10位にまたも新感線。新宿コマは!こう使う!と言わんばかりの演出見事でした。見終わった後の「あ~楽しかったー!」という満足度がすごい。9位は子どものためのシェイクスピアカンパニーが手がけた「ハムレット」で、この戯曲を初めて芯でとらえられたような気がしたこと、ハムレットのみならず毎回すばらしいシェイクスピアアレンジを見せて下さることに対しても感謝しております。8位は歌舞伎の演目ですが、勘三郎さん襲名のときの、玉三郎さん、仁左衛門さんと一座されたときのものです。深い心理描写、至高の芸、文字通り超一級でした。

7位と6位はいずれも2000年の上演で、2000年はこのほかにキレイもあった(キレイを入れていないのは私はキレイを近鉄小劇場でやった中継で観たからです)んですよね。いずれもその後再演されてますし、オケピは三谷さんが岸田戯曲賞もお獲りになりました。そしてNODAMAPはやっぱり番外が好きな私。5位は東京公演は2004年だと思うんですが、大阪は2005年の上演だったんですね。全然この作品に合ってない、しかもむちゃくちゃ視界がよくない劇場だったことをものともせず、作品でぶん殴られた記憶。

4位は蜷川さんの手がけられた作品で一番好きなもの。清水邦夫蜷川幸雄のゴールデンコンビのエッセンスが凝縮されたような一本ではないでしょうか。3位はこれも体験としての色合いがどうしても濃くなってしまうところはあるものの、新感線が初期から口にしていた「新橋演舞場」という舞台が用意され、しかも市川染五郎(当時)というこれ以上ない適役を得て、まさに快進撃がここからはじまったというような作品でしたし、あの新橋演舞場をとりまく独特の熱気のようなもの、今自分たちは最高に面白いものをみている、と観客自身が自覚するような熱さがありました。そういう意味では2位も同じような「熱さ」をもった作品だったかも。野田さんもご自身で「歌舞伎と手を組むことで今まで開かなかった扉が開いた感覚があった」と仰っていた記憶がありますが、その感覚は客席にもありましたよね。「今まで見たことのないものを観ている!」というはっきりとした興奮があのときの客席にはありました。単に新しい、というだけじゃなく、作品としての完成度もそれを裏付けていた気がします。

さて、1位はもうこれ以外にないです。扇町公園での平成中村座。この作品がなかったら私は歌舞伎そのものに対してずっと及び腰であったろうと思いますし、この作品に出合っていなかったら、その後の観劇人生はかなり大きく変わったんじゃないかと思います。おそらく2000年代の10年間で、これほど手を変え品を変え飽くことなく見続けた演目はほかにありません。ニューヨークまで追いかけたんだものなあ~。劇場から駆け出していく団七の後ろ姿、永遠に忘れたくない私の一瞬です。

2010年代ベスト10

  1. わが星(2011年)
  2. ヒッキーソトニデテミターノ(2012年)
  3. 阿弖流為(2015年)
  4. エネミイ(2010年)
  5. 天日坊(2012年)
  6. ファインディング・ネバーランド(2017年)
  7. め組の喧嘩(2012年)
  8. クレシダ(2016年)
  9. 南部高速道路(2012年)
  10. トロンプ・ルイユ(2019年)

これは10年後に同じことをやったらかなり作品が入れ替わりそうな気もしつつ。10位にはいちばん近いベスト作品を入れました。9位はね、これ意外に思われそうな気もするんですが、自分でも不思議なくらい好きなんです。なんだろう、ちょっと寓話っぽい題材ってのもあるのかな。いろんな見立てが炸裂した演出も好みでした。8位はとにかく平幹二朗さんの仕事が圧巻でした。劇中の「演ずるということ」のシャンクの台詞、実はメモしてスマホに保存してあります。7位は浅草での平成中村座連続興行最後の月の最後の演目。千秋楽も拝見したんですけど、最初に中日当たりに見た時の衝撃がすごかった。あの一瞬江戸時代の女性の気持ちになりましたよ。そういえばクレシダの平幹さんも、め組の勘三郎さんも、これが最期の舞台になってしまったんだな…。

6位は唯一来日ミュージカルがランクインですね。これ、幕が開いてから観劇仲間の激賛につられてチケットを買い、観終わった後あまりの号泣ぶりに立てなくなるばかりか、ホテルに帰る道すがらずっとしゃくりあげるという、ほんとあれなんだったんでしょうか。思い余って翌日の千秋楽も当日券で観ちゃうっていう。日本版上演なくなったのほんと無念です。5位の天日坊は主演3人の魅力もさることながら、宮藤さんの脚色力のすごさに舌を巻いた作品でもありました。作品の土台がいいところに役者の魅力が倍掛けでかかってくるんだから面白くならないわけがない。

4位はこれ、今のようにブレイクされる前の高橋一生さんが主演されてたんですが、それが目当てだったわけではなく、おそらくは一生さんつながりで観に行かれた演出家の激賛に引っ張られて直前でチケットを買った舞台です。すごく好き。1回しか観ておらず、戯曲が手元にあるわけでもないのに、ラストシーンの主人公の台詞が頭から消えません。人間としてこうありたい、とおもう一瞬を掬ってみせるような作品でした。3位はね!もうこれ散々ブログとかで書き散らしたのでこれ以上書くことないだろ的なアレです。祭りでしたね。祭りでした。人生で一番リピートした作品です(もともとリピートする回数が少ないタイプってのもありますが)。何度見ても飽きなかったなあ~。

2位と1位は実はどっちにするか迷いました。ちょっと甲乙つけがたい。個人的にこの10年でもっとも刺激を受けた新しい出会いは岩井秀人さんなのではないかと思っていて、その決定打がこのヒッキーソトニデテミターノでした。当日券で、日帰りで観に行ったんですよね名古屋から。あの胸の中にひたひたと熱いものを抱えたまま劇場をあとにする感じ、なんどもそれを反芻する感じ、久しく体感してなかったなと。1位は、これ、実は東日本大震災のすぐあとに観た作品で、そのことはかなりこの順位に影響している気がします。報道でいろんなことが明らかになってくるにつれ、おそらくどれほど離れた土地にいても、自分の足元に暗い穴を感じなかったひとはいないのではないか、という時期でした。大きな時間軸と小さな時間軸を同時に手のひらに載せる、そこには詩が現れると私の好きな劇作家が言っていますが、まさにその通りの作品でしたし、あの胸をひき絞られるような切ない一瞬や幕切れの鮮やかさは、あのときの私を暗い穴から引っ張ってくれました。あれからずっと、アポロチョコを見ると切ない。そんな気持ちにさせる一本でした。

おわりに

さて!駆け足でしたがざっと30年の30本を選んでみましたがいかがでしょうか。90年代の10本はもうかなり不動、という感じのある一方、2010年代の10本はなかなか決まらずだったので、時間が評価を決めていく部分もあるのかなと思ったり。30年間の総観劇本数も出してみようかとおもったんですけど、結局面倒が勝ってやってない!すいません!たぶんですけど、平均して10年で500~600本ぐらいにはなると思うので、だいたい1500?1600?ぐらいからの選出だと思って頂ければという感じでしょうか。

いやほんと、こうしてみると長いこと劇場に通い続けてるんだなって改めて実感します。こんなに延々と劇場通いをするようになるとは、たぶんそれこそ90年代の私は思っていなかったかも。観る作品の傾向もその時々で変わりつつありますが、ずっと変わらないのはやっぱり劇場が好きってことですね。劇場に出かけて、実際にそこで生まれて、そして舞台が終わればすべてが消えていく演劇というもののいさぎよさ、その美しさがずっと好きです。できればこの先の30年も、物理的にも社会的にも生き残って、劇場に通えるおばあさんになっていたいです。長々と自分語りにお付き合いくださり、どうもありがとうございました!2020年代もどうぞよろしく!

「私たちは何も知らない」二兎社

永井愛さんの新作で、青鞜社と雑誌「青鞜」にかかわった女たちの群像劇です。平塚らいてうを中心に、青鞜の創刊直後から第一次世界大戦中の青鞜無期限休刊までを描いています。

「原始、女性は実に太陽であった」から始まる文章は、それこそ歴史の授業でもふれますし、この国におけるフェミニズムを少しでも知ろうとすればまずここに行きつく、というぐらい有名なものなので、その青鞜社を扱った作品(チラシもブルーストッキングですよね)で、「私たちは何も知らない」というタイトル、脚本は永井さん…とくると、個人的にはどれぐらい現在へのリンク、現状へのフックがあるかな~というところに期待していたんですが、そこはちょっと肩透かしを食らった感じがありました。

休憩15分をはさんで約2時間40分の上演時間、なかなかの長尺ですが、登場人物たちの対話はコンパクトに積み上げられているので、長さを感じさせる前に場面が転換していくし、台詞の面白さはさすが永井さんという感じなんですけど、舞台全体としてはちょっと平板な印象になってしまった気がします。歴史上の人物を描くということは観客側がある種ネタバレを握った状態でもあるので、舞台のうえで「観客の知らないこと」が起こってほしいっていう欲求があるんですよね。それは史実にないことをやれっていうのではなくて、歴史の本では描かれない行間を埋めてほしいというか。

衣装が全員「今」の服装で、それには絶対に意図があると思うのだけど、最後まであまり劇的な効果には関係せず…というのもちょっと残念でした。新生児まわりのものだけが飛び抜けて「今じゃない」感にあふれていたのは、「コンベンショナルな女」としての記号的な意味があったのかな。

「新しい女」としての革新の機運を持っていた同志も、家父長制度や出産にまつわるあれこれや、家や夫にひとりひとり枷をかけられてしまうっていうのは今でもあんまり変わってなくて、でもそこからすこしでも「変わったこと」を見出すのか、変わってないことから「何か」を見出すのか、そこを永井さんの筆で描いてほしかった気がしております。

そうそう、寡聞にして「若いツバメ」が平塚らいてうと恋人の関係に端を発していたとは知りませんでした。この言葉もだんだん通じなくなっていくのだろうか。

伊藤野枝を演じた藤野涼子さん、「ひよっこ」視聴者としては嬉しい再会。あの若さでこの達者さ、これからが楽しみです。平塚らいてう朝倉あきさん、涼やかでマニッシュな佇まい、紅吉くんが夢中になっちゃうのもわかる、わかるぞと言いたくなる魅力があってよかったです。

2019年の映画ふり返り

続いて映画ふり返りです!鑑賞本数31本(リピート含まず)。複数回見たものもありますがそれでも35本ぐらいかな。ということで2019年良かったもの5選(見た順)。

アベンジャーズ/エンドゲーム
神と共に(第一章・第二章)
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
ロケットマン
ラスト・クリスマス

2019年はなんといってもMCUの一大フィナーレの年でしたよね。GWの10連休のど頭が公開日だったので、見る前は情緒不安定になるし見た後は放心状態になるしで大変でした。しかし見れば見るほどというか、よくもまあこれだけのキャラクターを要所要所に配して、インフィニティ・ウォーから続く二部作をまとめあげたな!と思いますし、なによりこの何年か、MCUの新作を映画館で見る、という同時代者ならではの楽しみをこれ以上ないほど味わわせてくれたシリーズで、それになにより感謝したい気持ちがあります。だってそれまでは1年に1回か2回映画館に足を運べば多い方という人間だったので、MCUにここまで引っ張られてなかったら映画との距離は絶対今とは違ってたろうなって思いますもん。

神と共には第1章のつきぬけたエンタメ性、第2章のこれでもか!なドラマ性、一粒で二度美味しい~!感が最高でした。ロケットマンはエルトンとバーニーのあの名付けられない感情のやりとりっつーか、これが実話なのがすげえっつーか、リアル…すごい…ってひさびさに大の字感覚を味わいましたね。ワンス~のブラピ&レオさま共演もやばかった。っていうかブラッド・ピットのアンテナ交換がヤバかった。あんなセクシーアンテナ交換あります!?ラスト・クリスマスはこれこそまさにひとさまのおすすめがなかったら絶対手を出してなかったやつ。まだ見られるのかな?見られる方はぜひ映画館で!

あとこの中にあげた作品にはないんですけど、ブラッククランズマン、スターウォーズエピソード9、Netflixのマリッジ・ストーリー等々、見る作品見る作品できわめて深い印象を残したアダム・ドライバー!むっちゃくちゃいい役者ですよね。あんまり役者を追いかけて作品を見ることをしないんですけど、アダム・ドライバーはちょっと追いかけたくなっちゃいます。2020年も彼の仕事をたくさん見られると嬉しいなー!

MCUは一段落したとはいえ、これから公開予定されている作品やディズニープラスで展開されるドラマもあるし、今ぐらいのペースで映画館に行くのも続けられたらいいなーと思っております。