「関数ドミノ」イキウメ

  • シアタートラム C列4番
  • 作・演出 前川知大

面白かったです!こういうふうに、コンスタントに劇団公演があってそのどれもがあるレベルに達しているっていうのはすばらしいですね。次も必ず見に来ようって思わせます。

過去2回の上演は未見で、今回は改訂再演という形になるんでしょうか。とある交通事故を目撃した人たち、その事故には「理屈では説明のできない」不可思議なことがあった…というところから始まります。東京公演は終わりましたが、まだ地方公演残っていますのでこの先畳みますね。観に行く予定のある方はネタバレしないでご覧になることをオススメします。
その事故の「不可思議さ」を「ドミノ幻想」という形で立証しようとする男を軸にしています。それによれば、ある特定の人物を中心に世界は回っていると考えられ、その力を持った人物「ドミノ」が本心から願えばそれは必ず叶えられる。一種の超能力のようなもの(ただし恣意的には使えず、無意識の、本心からの願いだけが該当する)ですが、その「交通事故」においてまさにそのドミノの力が発動したのだ、と男は主張する。

うまいなと思うのは、たとえばそういった超常現象的なものを「あるテイ」で話を進められると、見ているこちら側は置いてけぼりをくらいがちなんですが、ギリギリ最後まで、ほんっとうにギリギリ最後まで、その「ドミノ」という存在について、単なる被害妄想の理論武装、という余地を残しているところでした。いや実際、ドミノという存在そのものよりも、最後は「信じる」という力のポジティブさネガティブさに落とし込んでいるところもあり、舞台で起こるエピソードはその力があるか、ないかを巡る登場人物たちの機微が描かれているにも関わらず、最終的に超能力あるorない的なオチではないところがすばらしい。

それにしてもラストの展開とあの暗転の効果たるや。音でびっくりして、ってことはよくありますが、暗転ひとつで心胆寒からしめるとはまさにこのこと。実験者効果、なんて言葉を思い出してしまったり。

中央に四角い大きなスペース、それをとりかこむ様々な椅子やテーブル。それぞれが登場人物の日常を切り取ったもの(病院の椅子らしきものとか)なのですが、かといって特定の役者が特定のスペースに偏ることなく、柔軟にそのセットをいろんなものに見立てていくあたりもうならされました。

浜田さん、前半の数々のエピソードを引っ張る、どこか「全能感」にあふれた人物像がお見事でした。安井さんとの対比が効いてますよねー。現実が「ドミノ」ということば一つで違う貌を見せるなかで、あくまでも理に沿った盛さんの医者と、逆に情を重んじつつも善意からぶれない伊勢さんの看護婦の対比もよかったです。個人的には盛さんが出てくると相当ホッとした思いがしたので、私はやっぱり「理」のほうの人間なんだなーとしみじみ思いました(笑)