「関数ドミノ」イキウメ

いやーー面白かった。劇団としては再再演?再々再演?とにかく複数回手がけてて、私も前回公演は拝見してるので、物語の骨格はわかったうえで見ているわけだけど、それでも観ながら「いやこの面白さ、尋常じゃねえな」と我に返るぐらい面白かった。

とある交通事故を目撃した面々が保険会社の調査のために集められ、それぞれの目撃証言をもとに事故の検証がなされていくが、その事故にはどうしても科学的には説明できない、ある不思議な現象が起こっていた。

何が面白いかって、やっぱり一種悪魔的に脚本がうまいってことなんですよね。2時間の物語の間ずっと、その「ドミノ」という存在が実在するのか、しないのかのせめぎ合いというように表見上は進んでいくけども、裏で通奏低音のように「信じる」ということの力を問いかける、という旋律がずっと鳴っているわけなんですよ。そしてそれが、最後の最後に至って主旋律を超えてくる。ある超常現象の話のように見えるし、実際そうなんですが、なんつーかまるでオセロのようにね、最後にはぜんぶが反転して見えてくるあの興奮よ。それが単に観客を驚かせるためだけの反転じゃなくて、最初からそういう視点で見れば全部違う物語に見えてくるんじゃないかって思わせる石の置き方の巧みさたるや。いやマジで悪魔的だとおもう。

しかも今回はね、それを大きな観客への縦方向のボールでくくるというのもうまいなと思った。前回は物語のための物語としてむちゃくちゃきれいに(おそろしくきれいに)閉じていただけに、今回の構成はより「信じる」ということへのおそれと信頼が全面に出た印象が強く残りました。

イキウメンズもさすが上演を重ねてきた凄みというか、全員完ぺきといって差し支えない完成度。安井さんほんとうにすごい。途中で「ドミノ」の存在の説明が、その存在に自分が虐げられてきた、敗北者の人生をいやおうなく選ばされてきた…という、個人的な繰り言にモーフィングしていくところとか圧巻すぎたわ。浜田さんのあの超然とした佇まい、得難いと思うと同時にそういうふうにも、そうでないようにも見える絶妙の芝居の作り方にも唸ったなあ。温水さんは最後のボールを決める重要な役回りですけど、さすがここぞというところで仕事をする男。

2時間の台詞劇、濃密で、スリリングで、しかも自分にとっては再見なのでその手の内は読めているはずなのに振り回されてしまう巧みさがあって、参った。もう手放しで褒める。褒めます。もう1回言うけど、ほんっとに面白かったです!