「トップガン マーヴェリック」感想その2~ネタバレなんでもあり編~


というわけで前段で何文字書いてるんだよって話ですが、ここから具体的な映画の感想です!これまた言いたい(書きたい)ことがありすぎる件。タイトルからしてお分かりのとおりここから先はマジでネタバレしか転がっていないの未見の方はここまでだ!続きは見てから読んでちょうだい!いやわたしネタバレ大丈夫です~という人でも映画を見てからにしてほしい!マジで!

無印のトップガン、前段でも書きましたけど私にはド直撃世代で、でもトム・クルーズに夢中になった記憶は全然ないんですよ。むしろね、グースが好きだった。正直その頃から趣味嗜好変わってない。そんで続編の話が出た時に「グースの息子」が出るっていうのがいち早くアナウンスされてた。あーつまり、過去のエピは絡んでくるのねと。ヴァル・キルマーアイスマンも出るらしいっていうのも割と早くアナウンスされてた。えっでもどんな風に?予想がつかない。最初の予告編見た時の感想としては、これはあれだな、マーヴェリックはなんだかんだあってまたトップガンに戻ってきて、そこにグースの息子がいて、そのことを知らなかったマーヴェリックとすったもんだあってとかいう話になんのかなと。親父はお前のせいで死んだ!的なターンが入るアレですねと。

ぜんぜん違いましたね(ぜんぜんって程でもないが)。

あのドドドドド級にかっこいいオープニング&デンジャーゾーンを経てのマーヴェリック登場で、あのコルクボードの写真の山見た時に私は思った。
おいおいおい。
おいおいおいおい。かき集めとるやないかい。
無印でのグースとの劇中ツーショットかき集めとるやないかい。
あげくロッカーの扉にまで写真貼っとるやないかい。
え?なに?そんな感じ?そんな感じでいくの?そんな引きずったアレでいきます?よござんす。望むところでやんす。なんか若干キャラ見失ってますが、そのあとのダークスターテスト飛行のあまりにも静謐な美しさ、エド・ハリスをここに持ってくる心憎さ、ダークスターの風圧でふっ飛ぶセットの屋根とかに心を持ってかれてたら、いっぱつめの「Talk to me,GOOSE」が出て(字幕だと「やるぞグース」かな)、そんな…そんなアレなの!?ってまたおののく私。いやだって…最後ドッグタグ海に捨ててたじゃないあなた!

いやわかる!皆まで言うな。喪った相棒のドッグタグを後生大事に抱えているキャラ、そういう主人公はともすれば「弱腰」とも受け取られかねないというか、とにかくどんな挫折があっても、立ち上がり、立ち直り、この空も女も全部おれのもの、そういう結末が「あるある」だったわけだからあの時代には。すくなくともブロックバスタームービーにおいてはそうだったと思うし、あれはひとつの通過儀礼として描かれてたと思うんですよね。

でも今作のマーヴェリック、なんならあのあと海に投げたドッグタグ拾いにいきかねないじゃないですか。それで、観客ももうそういう人間を、弱さを持った人間を受け入れる土壌が出来てるわけじゃないですか。そうじゃなかったらとむくる先輩はそういうキャラ造形を持ってこないと思うんですよ。

ダークスターのあの事故でなんで無傷なのマーヴェリック…それが一番怖いわ…というのはさておき、マーヴェリックがトップガンに教官として戻る、というところからは、物語は基本的にあるひとつのミッションに集中して展開していきます。いや正直、今回の脚本構成って神じゃないですか。超難関であるミッションが示され、それに対してトップガンの卒業生たちを鍛えていくマーヴェリックが描かれるわけだけど、まずそのミッションの全体像を観客も飲み込んだ状態で観られるのが大きい。でもって、その困難さを場合分けして見せていくことで(超高速の超低空飛行、ポップアップ&背面降りからの超高精度爆撃、最後の猛烈G)、何が作戦のヤマなのかを考えなくても感じることができる。だからこそ、いよいよ作戦本番のときに、我々も一緒に手に汗握らずにはいられない。そして「訓練と実戦は違う」ということも、劇中の人物たちと同時に観客も感じることになる。いや上手すぎでしょ!

その縦糸がドーンと太いから、そこにインサートされてくるルースターとのエピ、ペニーとのエピ、アイスマンとのエピがひとつひとつクッションになり、かつ次の段階へマーヴェリックが進むきっかけになってるのも唸る構成。ペニーとかさあ!いやさすがに私も無印でグースが口にした、マーヴェリックがちょっかいだした提督の娘の名前とか覚えてないですわ!でもそういうの無印ファンには嬉しいよね。演じるジェニファー・コネリーがまた美しいのよ。飾り気ないっていうか、常にむたくたラフな格好だけど、それが鬼似合ってる。80年代に一世を風靡したスター同士のこの齢50を超えてからの共演というのもグッとくるものがあった。二人が「子育て」について語り合うところ、ある意味あの瞬間はペニーはマーヴェリックのメンターでもあるんだよね。制限するのではなく信頼するのだという示唆を与える役割。

アイスマン登場、まさかこんな形とはって思ったし、前半のテキストメッセージでのやりとりを思ってハッとしたし(それまではグイグイくるじゃんアイスぅ~とかのんきなこと思ってた)、俳優の現状をふまえた見事な作劇すぎた。この映画で最もエモーショナルといってもいいやりとりだよね。あの言葉は「過去は水に流せ」というより「もう解放してやれ」(解放されていい)ってニュアンスじゃないかって思うけど、あのマーヴェリックがアイスマンの前でだけ涙を見せることが出来るってのが重いし、それを受け止めてずっと(おそらくは問題ばっかり起こす)マーヴェリックを出世して守ってやってたアイスマンの愛も重いし、いや37年経ってこんな関係性が見られるとかどうすりゃいいのさこの私。泣かずにいられる!?無理!

一旦はサイクロンによって任務を解かれてしまうマーヴェリックが、ペニーの「あなたなら道を見つける」って助言を受けて2:15の壁を破ってしまうところ、いや、そりゃ、物語のセオリーからして成功するでしょ、と思うのに、食い入るようにモニターを見るルースターたちと同じ気持ちになるの不思議ですらある。なんなら息止めて見ちゃう感じすらあるよね。

それでさああ、あの出撃前にマーヴェリックとルースターが言葉を交わすじゃない。でも肝心なことは伝えられない。「帰還して話そう」ってマーヴェリックとが言うのが、あまりにテンプレのフラグ台詞すぎて、いやいや…まさかね?ってなるじゃないですか。それがあの、「棺桶ポイント」での被弾で「えっ…まさかだよね?そんなことある?そんな展開?」ってなるじゃないですか。

脚本の構成が神ってるってさっきも言ったけど、マジのマジで神ってるのがここからで、助けにくるルースター、撃墜されるルースター、それはマーヴェリックが絶対に、それこそ命に代えても絶対に見たくないものだったはずじゃないですか。その緊張が解けた時のふたりのやりとり、わだかまりが溶けていくっていうのを目の当たりにしてるというか、ぶつかり合うことでお互いがお互いを思いやっていたことがわかるっていうね。ルースターが「ここからのプランは?」つったときは私はまだピンときてなくて、二人が爆撃された滑走路でF-14を見ているってのがわかったとき、正直腰が浮きかけました。ウソでしょ!?そういうアレ!?って何度思わされたら気が済むのかっていう。そういえば最初のブリーフィングで言ってたねF-14があるって!かつてマーヴェリックがグースと飛んだあの機で、トムキャットで、今度はマーヴェリックとグースの息子が飛ぶってこと!?
やってくれるじゃねーかーー!!!!!
と声に出して叫びたい気持ちにさせられる、何度見ても。過去の遺物で一矢報いるのが嫌いな人なぞこの世におらんし(暴論)、メタなことを言えばトム・クルーズの無印への愛と敬意がすごいし、この展開に観客が何を見るのかってことを完全に理解してるのが本当にくやしいくらい図星なんですよ。的を得すぎてるんですよ。

第5世代機とのドッグファイト、見応えしかなかったね。見応えしかなかった。観客に「何が起きてるか」を秒単位で伝える編集もすごすぎ。「親父がここに座ってたら戦うだろ」って発破をかけるルースターもいい。ドッグファイトの最中、何度も自分を鼓舞するマーヴェリックもいい。いよいよ万事休すとなったときに、やっぱりグースの名前を口にするのも、本当に徹頭徹尾マーヴェリックがあの事故に、相棒を失った時間に捕まっているんだってことを貫いているのもいい。だってあの脱出装置で…って、前作を見ている人はどうしても思うし、また同じことがって思うじゃないですか。そこで観客とマーヴェリックが完全にシンクロしてるんだよなあ。そして、その窮地の脱し方がまた、ほんとに最高だから、みんなが「そうこなくっちゃ!」と思う展開だから嬉しすぎる。

空母への着艦シーン、やってくれるのでは?と思ったらやっぱりちゃんと管制塔をかすめ飛んでくれて、そのときのサイクロンとウォーロックの表情がまた良くて、そして着艦したあとはまるで無印トップガンを見ているようなあのセレブレーション。ルースターをハングマン、これがマーヴェリックとアイスマンみたいになるのかなって予感させる構図なの心憎すぎる。でもってマーヴェリックとルースターの「君は命の恩人だ」「父の代わりです」。

ルースターの「父の代わりです」を聞いた瞬間マジで、どわっと涙があふれた。なんか、頭の中でカチッと音がしたような、物語が閉じるような音が聞こえたっていうか、そんな気持ちになった。物語の中のマーヴェリックは、これでようやく自由になれた、解放されたんじゃないかと思う、グースの事故から。でもって、観客はあまりにも美しい物語の環が閉じるのを目の当たりにできたというかね。

こんな続編ありますかって思う。36年経って、今となっては軽薄を絵に描いたような見え方をするであろうオリジナルのトップガンに、語られるべき物語がまだあるんだってことをこんなに鮮やかに証明してくれる続編が。待って、待って、待った甲斐がありすぎたよ、本当に。80年代を生きた我々に懐かしさと同時に腹の底にぐっとたまるような活力をくれたし、80年代を生きていない沢山のひとたちにも同じようなパワーを与えているんじゃないかと思う。思いたい。でもってそのパワーはどこからきたかっていうと、本当に面白い映画って、最高に面白い!ってことなんじゃないかと思うんですよね。待った甲斐がありました。この映画をずっと待てて幸せでした!