「ビューティフル・サンデイ」 Showcase

  • 近鉄小劇場 H列6番
  • 作 中谷まゆみ/演出 板垣恭一

このお話は果たしてハッピーエンドなのでしょうか?私にはそうは思えない。これはハッピーエンドじゃない。これは終わりじゃなくて、始まりを描いているように感じるからだ。だからこれは、ただ一瞬の、幸福な記憶だ。それでも、たとえ一瞬でも、星を降らせたあの瞬間は、だからこそ、永遠に残る。永遠に消えない。これからあの3人になにがあっても、あの瞬間だけはホンモノだった。その記憶は、永遠に残るだろう。
そう、だから、ヒロとちひろと秋彦がこれからの3人の人生でずっと抱いていけるホンモノの瞬間を持つことが出来たとするのなら・・・。
やっぱりこのお話は、ハッピーエンドなのかもしれない。美しき日曜日の、ハッピーエンド。

3年ぶりに見て、やはり良い芝居だなあと思ったし、優しい芝居だと思った。話も知ってるし、台詞だって覚えてるかもぐらいなのに、やっぱり涙が出てとまらなかった。なんなんだろうなあ。ひとがひとを想うときの必死さや、必死さゆえの醜さや滑稽さや、それを越えてあまりある優しさにうたれてしまうのかな。星の中できれいに笑う3人はとても愛しくて、その愛しさに、涙が出てしまうのかな。生きていくのはやっぱりそれなり色々あって、うんうんと踏ん張りながら毎日を過ごしているわけだけど、こんな瞬間を持つことが出来たら、それは随分自分を支える力になってくれるだろうなと思わず考えてしまうほどに、あの3人の星の中の笑顔は素敵でした。

今回初演の堺さんに変わってヒロ役になった武田光兵くんについては、「頑張ってる」という評価が多かったのがよーくわかりました(笑)確かに頑張ってる。だが、頑張ればいいってものでもないわけで。小須田さん&長野さんの連投組が本気でほぼ完璧な仕上がりなだけに、余計落差を感じてしまうのう。正直最初の第一声を聴いたときは「やべえ!」と思いました私。それまでの二人のシーンとトーンが違いすぎたってのもあるんだろうけどなあ。見るにつれて段々慣れたし、他の二人の受け方もうまいってこともあって、終盤はそんなに気にならなかったんだけど。キラキラで、可愛くて、必死で。だけどひとには言えない思いをたくさんしてきたヒロのダークな部分はちょっと感じ取れなかった。病気の猫というよりは、病気の犬って感じだなあ、と。初舞台の人に厳しすぎる感想かもしれないですが、期待値も込めてということで。

小須田さんと長野さんは素晴らしすぎてもう、言うことがない。本当にない。最初の二人のシーンはマジで完璧。ひとつひとつの動きのタイミング、視線の合わせ方、セリフの間。あのシーンだけずーっと繰り返し見ててもいいぐらいだよ。それにしてもホントもう、凄いよな。特に長野さんは、自分が話を引っ張るときも勿論ですが、受けの演技がすごく良くてねえ・・・。台詞なんか全然なくても、ちひろの思いがちゃーんと伝わってくる。感情的に怒鳴ったりわめいたりする訳じゃないのにものすごくエモーショナルなんだよなあ・・・。おまけに3年前から比べても可愛さが増してるってどうなのか!?と同じ女として問いつめたいほどだ。素敵すぎる。

長野さんや小須田さんの力に支えられているという部分も勿論あるにせよ、私はやはりこの作品は作品自体にものすごく力が有るなあというのを改めて感じました。人によって受け止め方は様々でしょうが、しかし芝居の力というのを実感させてくれる作品であることは確かだと思う。showcaseシリーズには、こういう作品をこれからもどんどん生みだしていってもらいたいと思う。期待しています。