「バナナがすきな人」劇団♪ダンダンブエノ

旗揚げの時からうわーなんとも気になるメンツだなー見たいなーと思いながらタイミングが合わず見れずじまいだったダンダンブエノ。ようやく大阪に来てくれました。ありがとーーー!

昭和45年頃に小学生だった、私よりもちょっと年上(笑)な、近藤さんの子供時代を背景にしたホームコメディ。と、いいながら実は結構シビアで厳しいものも含んではいるのだが、それすらもほんわかと包んでしまう不思議舞台の空気。ほら話が得意なお父さんと、優しいお母さんと、ちょっと甘えん坊な小学生と、それを見つめる犬たちの視線。笑いと涙のバランスも絶妙で、幸せな2時間を過ごさせていただきました。

役者と配役で実はちょっと卑怯な!という感じもありつつ。あの温水さんに小学5年生の子供、酒井さんと山西さんに飼い犬と野良犬なんて、それだけでそのギャップになにをやっても笑ってしまうところがあります。お母さんにめっちゃ甘えるところとか気持ち悪くておかしいし、鳥肌立てちゃうお母さんもおかしいし。でもこれがさすがなんだけど、ちゃんと「小学生として」泣かせてくれもするんだよねえ。あのお弁当箱の話をするときの哀しさはほんっとに見ていて胸が詰まりました。それを受け止める犬たちの演技もいい!酒井さんのペーソス溢れる犬っぷりも見事。

嘘を信じ込んでしまうお父さん、それを受け止め続けたお母さん。あそこまで極端でなくても、ああいう男性、いますよね(笑)私は見ながらあーーもうこのお父さん一言ガツンと言ってやりたい!って感じだったんで、心情的にはお母さんに味方していたんだけど、それでもお父さんの最後の「離婚のプロポーズ」には涙腺大決壊でした。あれはずるいよ・・・。「嘘じゃなくて、ファンタジー」。お母さんにはもうお父さんの嘘が、ファンタジーじゃなくなってしまったんだなあ。愛がなくなって、ファンタジーがただの嘘に変わる。そうすると、もう一緒には居られないんだなあ。

お父さんをやった中井貴一さん、舞台を拝見するのなんとお初です!いやもう絶品。立て板に水式の口上のうまさや仕草にいちいち味があり、かつ軽妙洒脱。うっまいなあ!なんと言っても最後お父さんの嘘を本当にしようとしてサチオが見る妄想?のシーンがすごい!鮨職人、お殿様、マタドール、そして橋幸夫。あーもう腹痛くなるくらい笑った。あの橋幸夫だけでチケ代半分ぐらいの価値あるんじゃないか。爆笑しつつ、でもだんだんお母さんが取り残されていっていくのが気になりつつ。結局ハッピーエンドとは言えないんだが、最後に見せるお母さんの優しさとお父さんの愛がすてき。泣いたなあ。サチオくんがペスと僕を別れ別れにしないで、っていうとこも泣いた。演ってるの温水さんと酒井さんなのに。本当に小学5年生と、しょぼくれちゃった飼い犬に見えてしまうとこが舞台のマジックだなあ。

お父さんとサチオが「なんだかわかっちゃった」といってお母さんを送り出すのはある意味出来過ぎと映るかもしれないけれど、これ近藤芳正さんの殆ど実体験なんだよね、多分。徹子の部屋に出ていたときに、お弁当の話してた気がする。だからこれは近藤さんなりの、過去との折り合いの付け方なんだろうなとも思って、そうするとその優しさにまた泣けてきてしまったりするのでした。