「キャバレー」

ミス・サイゴン」でやっぱ私ミュージカル向いてないかも・・・と尻込みしがちな気持ちになっていたのですが、そんなことなかった!やっぱ作品によるんだな〜(当たり前)。曲もたいへんにかっこよく、何より作品の世界観が私の好みにがっつりはまりました。ああ、誰かサントラのお勧め教えてください。会場では売り切れだったのん・・・。

いろいろな深読みができる作品だろうと思うんですが、映画版も見たことない、ネタばれ一切なしの初見で挑んだ私のなかで一番心に残ったのは「ここでしか生きられない」という人間のせつなさ。二幕でシュナイダー夫人が歌う「どうしろっていうの?」の場面で一番如実に表されているけれども、ラストで「キャバレー」を歌うサリーにもそれは当てはまることであって、この世界、猥雑でいかがわしくてその日暮らしなキャバレーの、ひとときだけ明るいスポットライトの中から、彼女は飛び出していくことができない。外に世界があることは知っている、差し伸べられる手もある、だけど彼女は飛び出していくことができないのだ。だからその代わりに「私はキャバレーが好き」と歌う。「ゆりかごから墓場まではそんなに遠くないから」と。自分への愛も嫌悪もごちゃ混ぜにして、それでも必死でキャバレーの楽しさを震える足で歌うこのナンバーが、私には最も心に深く刺さりました。

役者さん的にはMCの存在がすごく効いてるなーと思った。魅力的な役ですよねえ。自分が役者だったら誰しもがやってみたいと思うんじゃないのかなーとか。ああ、こんな人にやってもらいたい!という人がいろいろ思い浮かんでもう大変(笑)。キャストの方も声が深く響く感じですごくよかった〜〜〜。サリー役の人は何よりラストの「キャバレー」が素晴らしかったです。シュルツ氏&シュナイダー夫人のコンビも素敵だったなあ。

「キャバレーのラストシーンをばらすことはミュージカル界のタブー」(by moguさま)というのも頷ける、ある種衝撃的なラストではありますが、とりあえず私個人的には非常に好きなエンディングではあります。もともとの寓意はともかく、そこから読み取れるものは今も昔も少なくないと思う。ありきたりのハッピーエンディングよりも、断然私のハートをがっちり掴むラストでありました。