「リチャード三世」

シェイクスピアの作品の中でも有名かつ人気の高い一本。絶対どこかで見たと思いこんでいたけどよく考えたら遊眠社の「三代目」とアル・パチーノの「リチャードを探して」を見てるだけなんだった。前者は野田テイスト満載だし後者なんか映画だ。というわけで、ちゃんとした(?)「リチャード三世」、これが初体験。

初体験とは言いながらもまあ話の筋は大体知っているので、主におお、これが有名なあのシーンか!という楽しみ方。ハムレットマクベスよりも私は楽しめました。何より、主人公にやる気があるのがいい。悪事にだけだけど。それにリチャードって「悪」を「悪」と自覚して邁進しているところが、この主人公に嫌悪感を感じない理由かなと思う。アレで、自分は正義だと思われてたらうざいぜーーー?名だたる役者が挑戦したくなるのも、そのあたりにあるのかなと思ってみたり。

最初と最後のサプライズ演出はまあハッキリ言えばベタとは思いつつ好みです(笑)わははは。ああ〜好きだ〜ああいう嫌みな終わり方。一幕最後の、リチャードが王冠を受けるように市民から嘆願される(のを装う)シーンで、客席をうまく市民に見立ててノセていたのも面白かった。茶番劇をいかにも茶番劇に見せることに成功していて、客席の笑いを誘うあたりもいい。あんな茶番を重々しくやられても困っちゃうよなあ。

役者はとにかく市村さんのリチャードに尽きる感じが大きいな。独白で客席を味方に付けることに成功している。クールで悪でチャーミング。一幕ではアンと、二幕ではエリザベスと、丁々発止のやりとりの末この二人の夫人を(ある意味)オトすわけですが、そこでの説得力もさすがでした。衣装がまた素晴らしくて、なんでもガーゼを使ってるみたいなんだけど、あの冒頭の赤いマントがふわふわとたなびくたび思わずうっとりと見惚れる自分。そのあと黒のマント、黄金のマントと変わるんだけど、赤いマントの冒頭が一番好きだーー。あとはやはりエリザベスの夏木マリさんかなあ。市村さんとのセリフの応酬は見事の一語!女性陣の中で唯一市村さんとタイマンはった、って感じ。2幕でロンドン塔の石に別れを告げる嘆きの場面も好きでした。バッキンガム公の嵯川さんをはじめ、男性陣はみなさんなかなか良かったと思うんだけど、女性陣がなあ。アン役の香寿さん、もうちょっと・・・なんか・・・がんばれ。台詞に食われてる感ありありで残念。しかしマーガレット役とヨーク公爵夫人の二人よりはまだ良かった。この二人はもう全然ダメだ。特にヨーク公爵夫人の方。君いま、自分がなんでそんなに嘆いてるかわかって言ってる?みたいな上っ面な台詞連呼。これで新劇系の大物さんだってんだからちょっと呆れますな。おかげでますますリチャードに肩入れしてしまうよ。ってもしかしてそういう作戦だったんすか、蜷川さん!(んな訳ない)