「ナイン THE MUSICAL」

  • シアターBRAVA! 2階F列14番
  • 演出 デヴィット・ルヴォー

『8 1/2』どころか、フェリーニの映画を一本も見ていない私である*1。ぜんぜん自慢できるこっちゃない。グイド・コンティーニという映画監督と、彼をめぐる16人の女性を描くミュージカル。

正直、一幕はうーんちょっと食いつき悪いかなーという感じが否めず。池田有希子さんがシーツにくるまれて出てくるシーン(あれ、すごいですよね!)大浦みずきさんの際だつ存在感等々、いいなあと思える場面も多かったんだけど、全体的に歌詞が聞き取りづらくそっちに気を取られすぎた。この劇場の音響のせいなのかしらんと思ったんだが、大浦さんや田中利花さんの声はクリアに聞こえたのでそうでもないんだろうなあ。

しかし二幕で、厳格な神学校に入れられた少年グイドの過去の話になるあたりから急速に集中した。っていうか、田中利花さんの歌、大っ好き。彼女の声ほんといい。一幕の最後、少年グイドの手のひらからこぼれる赤い砂を受け止めるところでカットアウトになる演出もすごく印象的。二幕は個人的に大絶賛。クラウディアとの再会から実際に映画を撮り始めるグイド、でもそこには「芸術家としての自分」と「本来の自分」が重なってしまったものしかない。ボッティチェリプリマヴェーラの三美神を背景に、グイドが自分にとってのミューズたちに去られる場面、すごくよかった。そして最後、ひとりになったグイドが「老いた監督の末路」を語るところで出てくる少年グイド。ごめん、泣いた。9歳の自分を解放し、9歳の自分に解放されるグイドに。ああ、わたしはいつまでたっても「赦されない子供」というのに弱いのです。

舞台装置、ならびに美術が素晴らしくて、2階席で見たので俯瞰でいろいろ見れたのが楽しかった。ひとつひとつの場面の、ここぞ!というシーンでの絵的な美しさも印象的。別所さん、一幕のときは「もうちょっとへなちょこフェロモンあった方がなー」とか思いましたが、二幕の魂の入りっぷりは見事!歌詞も後半になればなるほど俄然聞き取りやすくなってきて、おかげで集中できました。大浦さん、出てきただけで存在感が違う(笑)。声がいい!!何とも言えず深みがあって、うるさくないのによく届く。純名りささんのクラウディアもよかったです。

それにしても難曲が多いね!ミュージカル素人だけどそう思った。これをがっつりこなしたうえで客に届ける作業まで持っていくには生半可な歌唱力じゃ出来ないだろうなあ。しっかしこれをバンデラスでやってたんですよね・・・見たかった・・・。しかし、個人的にはグイドをやるのはもっとへなちょこフェロモン満載の人がいいんじゃないかなどと思ったりね。えへへ。

*1:唯一知ってるのは『道』ぐらいで、しかもそれもサードステージプロデュースの『大恋愛』でいっけいさんと筒井さんがやっていたからというお粗末さ