「パイパー」NODAMAP

野田さん新作。NODAMAP本公演でキャスト発表でここまで血がたぎったのも久しぶりではないかという。好きキャストの連打。

火星が舞台、というとどうしても火星年代記が出てきてしまいますが、まあ野田さんが読んでないわけないと思いますが、インタビューではそれほど影響受けてない、みたいな話をされていましたよね。以下すこしネタバレかも。

火星を舞台にしているからか、寓話的な印象が強く残る感じはありますが、しかしこのところの野田さんの特色である「直球の怒り」は変わらないなあと思いました。死んでいく惑星で、どんなフリをしていればいいんだという終盤の橋爪さんの台詞は、まさに直球に私たちに投げかけられているし、救いという金星人がやってくるときの「パイパー指数」の数字もあまりにも強烈にそれを示唆していると思う。

そういう作風ももちろん嫌いではないのですが、ふと野田さんはもうこういった作品だけを書いていくのかなあ、と心をよぎって、それはちょっと寂しいなとも思ったりしたのですが。

とはいえ、はかれないものを数値で表していく、満足度も住みやすさも芸術さえも。その先に幸福度を数値で表していくという未来があっても、それを笑い飛ばす現状には今はないですよね。その設定にはすごく心惹かれるものはあったのですが、ラストの展開にちょっと疑問符の残るところもあり。しかし、もしこれが番外公演とかだったらラストシーンは違っていたのかな。野田さんなりの親切心なのかなあ。

宮沢りえ松たか子の姉妹、よかったです。りえちゃんのほうにフォボスを振ったのは成功してますよね−。潰したようなハスキーな声になってるけど、発声の力強さは失われていないので気にならなかった。しかし松さんはほんとに驚異の喉をしてるよなあ〜。彼女がのどをやったところを見たことがないです。終盤の、二人が「ゼロに戻っていく火星」を描写するくだりは圧巻。*1

橋爪さんは要所要所でにゅっと顔をのぞかせる異様さがすごい。うまいよねえほんと。小松和重さん、北村有起哉さん、大倉孝二さんの私の大好き「ひょろながトリオ」は残念ながら絡みがなかったんですけど、大倉さんは飄々とした味も失わずいいスパイスになっていた感じでした。コンドルズの皆々様は「パイパー」として出てくるのでそれほど彼らの自在さを楽しめる感じはないけど、モブの動きはもちろん、いろいろなところにコンドルズらしい動きがあって面白かったです。やっぱり近藤良平さんの動きですよね〜。

*1:しかしここで携帯を鳴らしたやつが・・・!もう殺意芽生えたよ