「ちっちゃなエイヨルフ」

えーと、昨日の感想に「期せずして似た構図の芝居を立て続けに見てしまった」と書いたんですが、またしても期せずしてというか3本目も共通の構図を持った芝居でした。どんだけ!キーワードは家族、隠された心情、そして招かれざる客。

観念的な台詞が続くシーンが結構あるので、そこを集中して見せきれるかというのは結構大事な気がします。役者の力量と演出の手腕の見せ所というか。登場人物は皆何かを喪って、その穴を見ないふりをしたり、埋めようとしたりする。その生命力。

エイヨルフを喪う前のリタとアルメルスの会話、「あの子がいなければいいのに」という会話のあとに実際にその子がいなくなるという事件が起こるわけですが、あからさまに子供を邪険にするそのリタの台詞よりも、エイヨルフを喪ったあと、悲嘆に暮れながらも「その子を命がけで助けに行くか」というアルメルスの問いかけに「わからない」と答えるところにぞっとさせられました。

そういう意味で行くと、芝居のラストで、この場所を貧しい子たちに開放する、と言うリタに賛成し、自分もここにいていいかと尋ねるアルメルス役の勝村さんが、リタの手を取った後観客に見せた微笑みはなんだったのかなあとも思ってしまいますね。大義名分を見つけた安堵感のような、というのは意地悪な見方過ぎるでしょうか。

アスタとアルメルスの関係は、この芝居の中でずっと低く鳴らされる音楽のごとく、不穏な影を投げかけていて、しかしそのアスタが、半分しかあなたに差し上げられない、と言っていたアスタが、「私たちのエイヨルフになって」という言葉をきっかけに「半分」を捨てる決意をするところは鮮やかでとてもいいシーンだったと思います。
美術もよかったなー。登場してくるだけで絵になる感じがいい。

しかしそれにしても、アスタとアルメルスのやりとりはいちいちエロかったな!抱きしめたりだの膝枕だの直接的なへなちょこエロエロ攻撃もさることながら(取手くんのごとき「俺じゃダメか?」スタイルもありましたな)、個人的にいちばんえっろー!と思ったのは喪章を袖につけてもらうところですね!あれやばいよ。今にも勝村さんが糸をかみ切ろうとして伸ばした馬渕さんの首筋にキスしちゃうんじゃねえか!ぐらいの接近戦、でも実際は何もしない。ひー!しかもやってもらってることは喪章をつけてもらうというそのタブーな感じもまたエロに拍車をかけているという。

しかし馬渕さんはうまくなったよね・・・としみじみ。とよた真帆さんのリタも、野間口さんのボルクハイムも落ち着いた語り口でよかった。勝村さんのアルメルス、いやーへなちょこ男を絵に描いたようで堪能、堪能しました。へなちょこ基本姿勢であるところの「膝抱えうずくまり」も拝めて満足です。そしてアスタとの間にえろいビームだしまくりでそれも堪能しました。オーフィディアスみたいな役も大好物ですがこういうのもたまにはいいよねー。