さて、この「盟三五大切」という演目。実際に観たのは初めてですが、ずっと前から名前は知っていた、もしかしたら一番最初に知った歌舞伎の演目かもしれません。それはなぜか。
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警部補・古畑任三郎ファーストシーズンの第2話。「動く死体」。犯人役は堺正章さん。
刑事物はちょっと、とオファーを断っていた田村正和さんが、この回の脚本を読んでオファーを受けたという作品です。
今更ネタバレもないと思うのでいきなり最後の展開を書きますが、この回で歌舞伎役者を演じた堺さんは古畑に追い詰められるわけですが、その古畑にもどうしてもわからないことがあった。それはなぜ、犯行後にすぐ帰宅しなかったのか、ということ。それに対する答え。
来月の盟三五大切って芝居ね、私がやる薩摩源五兵衛。芸者殺した後に、茶漬け食うんですよ。どんな気持ちか味わってみたくなってね。・・・役者の鑑でしょ?
この台詞。
ものすごく印象に残ってるんです。印象にというか、忘れられない。何度も観たわけではないのに(もしかしたら1回しか観てないかもしれない)はっきりと覚えてます、今でも。
そんなわけで私にとって「盟三五大切」というのは「女を殺したあと茶漬けを食う芝居」として深く深く刻み込まれていたのでした。
しかし、実際に観ても、あのシーンは壮絶ですね。恨みと愛情が、いや愛情というよりももはや執着なのか、悲しくて、そしておそろしい。
ちなみに、誰にも聞かれていませんが古畑任三郎のシリーズのなかで、脚本的な完成度としてはこの「動く死体」が、演出としての完成度としては桃井かおりさんが犯人を演じた「さよなら、DJ」が白眉です。私の中では、そういうことになっています。
「動く死体」は舞台役者を犯人にして、まさにその「舞台裏」を犯行場所に選んでいるだけあって、三谷さんの演劇人ならではのアイデアがふんだんに味わえる名作中の名作です。「さよなら、DJ」はなんと言っても殺しのシーンの演出ですよ。あれはしびれた。未見の方はぜひ。