今年の清盛

というわけで第50回まで、途中からでしたけど毎週の「今週の清盛」も終わりでございます。読んで下さってた方がいるのかどうかもわかりませんが、ともあれ毎週書こうと決めてからはちゃんとラストまで来れてよかった。途中PCがぶっ壊れるという不測の事態もありつつ、ネットカフェを駆使するなどしてどうにかこうにかここまできたぜ、と。

ほんとに最後の最後まで視聴率のことをしつっこく書かれて、いやもうそれはわかったから、見たい人は面白いと思って見てるんだからもう余計なお世話ですよほっといて!と思ったけど、すくなくとも私自身はこんなに楽しんでますヨ!ってことを言いたいし残したいし、見てないひとに見てもらえたら嬉しいけど、見てもらえなくてもポジティブな印象をちょっとでも残せたらなあとおもったんですよね。それが成功したかどうかはともかく、自分の中ではそういう気持ちが大きかったです。

テレビのことをこんな風に毎週感想を書き留めるってやったことなかったんですけど、毎週ってほんと大変なんだなーというのもやってみて思いました(笑)だって一週間ってちょっと気ぃ抜くとすぐだもの!

私自身は、ずっと言ってるんですがテレビドラマを見るのが苦手で、一話完結式はまだ大丈夫なんですけど、いわゆる連ドラは面白すぎると続きが待てなくてイライラしてだめだし、こらえ性がないからちょっとでも気に入らないとすぐ見るのやめちゃう、というタイプなんですよ。なのになんでこの「平清盛」にここまではまったんだろう。自分でもその要因みたいなものはよくわかってないのかもしれません。

強いて言うなら、ここで描かれたひとたちはみんなどこか弱い人間だったからなのかなあと思います。どの登場人物も、どこかで自分の弱さを見せていたし自覚していた。その弱さゆえに滅んでいった者もあれば、その弱さゆえにそれを凌駕する強さを獲得した者もいる。そういう人間たちを見ているのが好きだったからかもしれません。完全無欠のヒーローではなく、英傑たらんとしてもがく彼らを見ているのが、きっと私は好きだったんだろうと思います。

この人がいなかったらきっとこのドラマにはまらなかった、三上博史さん演じる鳥羽上皇シェイクスピア劇もかくやという日曜8時にこんな芝居汁だだもれでいいの!?と思わずにはいられない濃い芝居の数々が走馬燈のように甦ります。その鳥羽上皇とタメを張るかのような、平安時代のホモホモしさを一手に引き受け、これまた日曜8時にあーれーそのような、とこっちが指の間から画面を見るような芝居作りを見せた悪左府頼長の山本耕史くん、家盛と寝たことをお父さんに暴露するときのキミのあの眼球が飛びださんばかりのアプローチ、きっと忘れない。首に矢が刺さる演技がうますぎてCGの矢がCGに見えないとはおそれいりました。

その頼長とバトンタッチするかのごとく実権を握った阿部サダヲちゃんの信西、斬首を命じる苛烈さとサダヲちゃん自身の愛嬌と、なにより登場シーンが最期のシーンとリンクするという脚本家の手腕でこっちの涙腺をまあきりきり引き絞ってくれました。死に際の表情の見事さ、ああいうところで絶対に勝負を決める阿部サダヲという役者の凄さを思い知る。その信西を追い落とした玉木宏さんの義朝、なんといっても印象深いのは彼がその強さではなく弱さを見せてきてからで、力ではどうすることもできないものに絡め取られていく義朝は哀しくもあり、常磐御前でなくてもこんなひとがいたらほっとけないー!と女心をわしづかみにしてくださったことでした。結局のところ清盛は義朝といつまでも切磋琢磨していたかったんだなあということを50話まで見て改めて思う次第。

最後の最後まで清盛の前に立ちはだかり、「面白きことのなき世を面白く」しようとした後白河。演じる松田翔太くん、登場時のあまりの角髪の似合いっぷりに各地で「松田くんに日出処天子やってもらいたい」という声があがったのもむべなるかな。好きなコにいたずらしたい小学生か!みたいなことから本気でタマ取りにきてやがるぜ…!という命のやりとりまで、特にライバルを失ってからの清盛の前に立ちはだかり続けてくれたごっしー。そしてそのごっしーと清盛が最初に双六の勝負をしたときに賭けの対象となった重盛。窪田孝くん、このドラマで間違いなくその名を轟かせたのではないでしょうか。あの父への身を挺しての諌言、そして死の間際まで後白河と清盛の板挟みとなり、視聴者にお願いもうやめて重盛の(胃の)ライフはゼロよ!と叫ばせた、素晴らしい仕事をしてくれたと思います。もうほんと私もあの死に際の重盛たんが好きで好きで!(悪趣味)

そして主人公、清盛を演じた松山ケンイチさん。毎週の感想でも何度か書きましたが、終盤の回想シーンになるとほんっとにたった1年前と思えないほど清盛という人物の変遷が顔に、身体に刻み込まれていて、どこをどうやったらこんな芝居ができるんだ、しかも彼は(この芝居汁びちゃびちゃにしがちな出演者の中にあって)そこまでオーバーアクトというわけでもないのに、ふと振り返るとこんなところまで来ている、という驚きを何度も味わわせてくれたなあと思います。主演ということもあって口さがないことを言うひともいたと思いますが、私はこのドラマの主人公をこのひとにやってもらえて本当によかったなあと心から思っています。もう感謝の念しかない。

スタッフワークのなかで特に印象深いのは玉三郎さまも激賛されていましたがやっぱり衣装で、ほんと見ているだけでも楽しかったなあ。藤本さんの脚本、あのときのあれが!ここで!みたいな喜びが見れば見るほどたくさん拾えて、見続けていたからこその喜びがいっぱいありました。

好きな話は、これも何度も書いていますが「嵐の中の一門」、そして「平治の乱」「友の子 友の妻」、「忠と孝のはざまで」なんかがベスト5かなあというところです。残る1本はやはり「叔父を斬る」。この1本はほとんど私のなかで完璧といっていいです。脚本、演出、白と黒の対比、乗り越えるものと乗り越えられなかったもの。

毎週日曜日、テレビの前にいることが何より楽しみでした。そういうドラマを見られたことを本当に感謝したいです。楽しかった、いい1年でした、ありがとう!私の来年の目標はこの目で厳島神社を見ることです!!