「リボルバー~誰が【ゴッホ】を撃ち抜いたんだ?~」

原田マハさん原作の小説をご自身が舞台のために戯曲化。演出は行定勲さん、主演に関ジャニ安田章大くん。安田くんの舞台、いちど拝見したときに「このひとポテンシャルの鬼やな」と感じた印象が強く残っていて、近隣での公演でもあるし、足を運んできました。

ゴッホが自殺に用いた銃がひょんなことから場末のオークション会場に持ち込まれる、という「現在」を視点にしたストーリーと、ゴッホゴーギャンが生きていた当時のパリ、フランスを視点にしたストーリーが絡み合うスタイル。これ、うまくやれば非常に効果的なんですが、ちょっと現在と過去の交錯がシレっとしすぎていてもったいない感じ。過去のゴッホたちの姿を想像するオークショニストたちという視点がいつしかその物語の中に入り込んでいる、というのをもっと効果的に見せるやり方があったのではないかという気がします。

ただ、ある意味その「銃」の謎を追うフーダニット、ホワイダニットの構図のおかげで格段に見やすいという利点はあった。ゴーギャンゴッホ、テオとゴッホの関係性に焦点を当てるとはいえ、物語の展開としてはそれほど意外性もないので、銃にポイントを絞って過去に遡らせるやり方は小説原作の強みが生きたなあという感じ。

しかし、ゴッホ、好きだねみんな。ウィレム・デフォーゴッホを演じた「永遠の門」も見たけど、ゴーギャンといういわばXファクターが絡んでいること、そして自身の絵が賞賛され絶賛されることをついに目にしないままこの世を去ったというところが創作者の意欲を駆り立てるのか、ほんと、みんな好きだね、というのをしみじみ思いました。とはいえ今作のゴーギャンはちょっと、わたしにはセンチメンタルに過ぎたなという感じ。最後も、いやこれはちょっとロマンが過ぎるというか、甘い解釈だな~~という感想になっちゃったな。いやまあそういう私もテオとの関係性にはかなりロマンを感じているので、人のことは言えないですね。

安田章大くん、生き辛さを抱えた役柄をピュアにコーティングしてて飲み込みやすいゴッホ像。ゴーギャンと再会してぴょーんと飛びつくところ、モドリッチみたいだな…とほほえましくなった(ニッチな喩えを使うでない)。

今回のハコは東大阪市文化創造館大ホール。出来たばっかりのピカピカの施設で、駅から近いしミナミから近鉄で15分程度なので立地は悪くない。2階席で見ましたが、客席が千鳥なので見やすかったです。ただ、今回の演目、東京ではパルコでやってたわけで、キャパ636からキャパ1500。無理があるよなーと。やっぱりパルコサイズでできあがっちゃってるもの。大阪公演やってくれるだけでもちろんありがたいのだが、こういう問題は常に付きまとってくるよな…と改めて実感した次第。