「神州無頼街」

新感線新作!初日に観てきましたー!2020年の劇団40周年記念上演予定だった作品がコロナ禍で全公演中止に。2年後にほぼ同キャストで満を持しての42周年記念公演として上演!そう考えるとほぼ2年越しの初日だったわけですね。

新感線の初日を見るの、もうちょっと思い出せないぐらい久しぶりだと思うんですけど(初めてではない。たぶん)、そうだったわー!新感線の初日って、こうだったわー!という懐かしい味がしまくりました。わかる、段取りがね、尋常な数じゃないから。あと実際に回る盆を使っての立ち回りとか、間合いがね。むずい。あの殺陣が「合ってる」んじゃなく「合わせにいく」感が出ちゃうのとかね。わかる。わかるよ。いやもちろん初日に(そこしか見ない客もいるんだから、もちろん)完ぺきに仕上げてこいや派でもあるんだけど、そういう気持ちにもあんまならなかったな。ポテンシャルはぎゅうぎゅうに詰まっていて、そのポテンシャルの味を誰よりも早く味わえるのが初日の醍醐味と思うとね、これはこれであり。

富士の麓に「無頼宿」を名乗り幅を利かせ始めた新興勢力について、清水次郎長ら海道歴々の親分らが話をする中、突然現れた身堂蛇蝎一派は、蠍の毒を使ってその場にいる親分たちをあっけなく殺してしまう。かつて次郎長の命を助け目をかけてもらっていた医者の秋津永流と、口八丁で調子の良さがウリの草臥は、それぞれの思惑を胸に御堂一派の行方を追う、という筋書き。

以下はネタバレ含みますのでこれからご覧になる方はお気をつけください~

福士蒼汰くん演じる永流のクールビューティーぶり、中盤の出自の話で「やっぱりかーい!」ってなったし、中島せんせい、狼蘭どんだけすっきゃねーん!ってなった。なんだろう、中島かずきさんのサビなのかな。殺すことにだけ長けた自分のその腕を自分で解き放っていくっていうやつに燃えるのかな。その気持ち…わかるよ!(わかるんかい)

新しいな!と思ったのは蛇蝎と麗波の描き方っすかね。「おもしれー女」のゴアバージョンみたいなもっていき方すぎて「そうくる!?」ってなったし、歌の途中で「惚れるんかい!」ともなった。手段も目的もなかなかにエグく、最後までこのエグみが凄い2022という感じの夫婦像だったけど、さすがキャストのニンに合ってたなーと思う。

今回は製作サイドも正面切って「バディものです!」とうたっていて、実際そうなんですけど、個人的な好みを言わせてもらえば永流と草臥の「出だしの関係性」をもうちょっと明確に打ち出した方がよかった。バディものの醍醐味ってその関係性の変化ですから、最初の入りがどうだったかっていうのは解像度を上げるうえで非常に重要(早口)。歌を1曲削ってでもそこを書き足してほしかった感あります。そう、やっぱりこのキャストを揃えているので、歌の割合がちと高い。労働の歌は1曲でいいのでは(私が劇中の歌にあまり高まらないというのもあるが)。

それにしても、私の「劇中かっこいいメーター」の最大瞬間風速が川原さんで出るとは予想だにしなかった。川原さんのファンは今作はぜったい観に行くべき。思うに、じゅんさんの役回りだったんでしょうねあの役。しかし川原さん伊達に新感線の場数踏んでねえというか、あの名乗りの場面はキタキタキタアーーーー!!!という客の興奮を一身に引き受けててカッコいいったらなかった。そのあとの殺虫剤ソング、あの絵面の面白さ、最高に盛りあがった場面との落差の効き、今回のベストソングに認定しました私の中で。

どこからどう見てもカッコいい福士くんの永流、いつなんどきでも顔がうるさく華が満ち溢れる宮野さんの草臥は誰しもが夢を見れるコンビすぎて、全方位いけるじゃん…(何が)とあらゆるエピソードが楽しかったです。あとあれよ、ニーズわかってんねー!と思ったのは二人とも何気にお召し替えがむちゃ多い!最後の永流のアレなに!?王子様じゃん!?ってなったよね。初日ということもあって若干台詞がかかり気味というか、流れちゃってる部分があったのは惜しかった。キメはもっと存分にやってくれて良いのよ。

清水葉月さんと木村了さんも安定の仕上がりというか、仕上がり具合ではこのふたりが抜けてたまである。葉月、鬼の滑舌。どうしてそんなに聞きやすいのか。凶介の屈折と草臥との因縁は盛り上がりによっては私のドツボを突くやつなので今後の伸びしろにも期待したい感じ。

主演ふたりの関係性の良さがこれからどんどん出てきそうだし、東京公演組はお楽しみに、という感じですかね。そうそう、思った以上にご当地芝居なので、富士での公演はなかなかに盛りあがりそうだなー!と思いました!