「ひげよ、さらば」

  • COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール B列37番
  • 脚本・演出 蓬莱竜太

マジでなんでそんな風に思い込んだかまったく自分でも理解できないんだけど、公演概要がパルコ劇場からリリースされて、それ見た時から「あ~、あれね、あのネコの、11ぴきのやつね」と思い込んだ節があり、大阪公演の先行案内とか見てもその思い込みが消えず、最終的に劇場に行くまで思い込んでたしなんなら幕開いてからもしばらく思い込んでた。見ながら「なんか思てたんとちがう」ってなったけど(違うからだよ)、最終的に自分の勘違いを確信したのが一幕ラストなのでマジで救いようがない。

「ひげよさらば」の人形劇をNHKで観た記憶はうっすらあるような、ないようなというレベルなので(もちろん原作も未読)、ストーリーとしてはほぼ初見でしたし、かなりハードな展開が続くのでますます「なんでこれを11ぴきのねこと勘違いしてたんやろう…」感ハンパなかったっすね。片目の鬱屈した過去も相当濃いけど、ヨゴロウザ自身のトラウマもけっこう強烈。ヨゴロウザを飼っていたおばあさんが、放火するためのマッチを探すのに、1円でも安いマッチを探してしまうと自嘲したところとか、さらっと描いているけどかなりきつい。

しかし考えてみれば蓬莱竜太の脚本・演出なので、そんなほこほこにゃんにゃんな作品なわけもなく、蓬莱さんのえぐみがしっかり出た作品だったなという気がします。えぐみだけでなくささやかなカタルシスがあるのも蓬莱さんらしい。

私の趣味嗜好からいえば、1幕最後で片目の過去の裏切りを知って以降、片目とヨゴロウザは袂を分かったままいてほしい(できれば陣営が分かれて命のやりとりをしてほしい)みたいな気持ちもありましたが、共同戦線を張らない「ねこ」たちがぎりぎりお互いを助ける最後の戦いのシーンもなかなか見応えがありました。ナキワスレむちゃくちゃかっこいいし!

二足歩行で演じつつも「ねこの動き」がはしばしに現れるの、柄本時生さんさすがの身のこなしという感じでした。身のこなしという点では屋比久さんも美しくてよかったな~、歌声もとても素敵でした。中島裕翔くん、確かにお前は野良猫じゃない!という品の良さがにじみ出てて、前半はかわいさを、後半はかっこよさを押し出すしどころのある役柄でよかったんじゃないでしょうか。