「いつぞやは」

SISカンパニーのプロデュース公演。キャストの顔ぶれの良さに思わずチケット取ってしまった。直前で窪田正孝さんが怪我のため平原テツさんにキャスト変更になるも、テツさんならテツさんで観たい派。そして自分が横山拓也さんと加藤拓也さんを完全に混在しており本当にどうもすみません。

小さな劇団を主宰する男のもとに、かつての友人から突然連絡が入り、相手の言うままに久しぶりに顔を合わせると、彼は自分が病気になり、おそらくはそう長く生きられないことを知っており、だから昔の友人に会いに来たのだ、と語り始める。

最初に「主宰」である男が飴を配りながら客席から登場し、シームレスに舞台が始まるところ、訪ねてきた男が病気であること、歌を使った演出があること…そして何より平原テツさんが出ているのがやっぱり大きいのでしょうが、ハイバイの「投げられやすい石」をむちゃくちゃ思い出させる作品でした。とはいえ、「投げられやすい石」のあのいたたまれなさの濃縮還元、みたいな感覚はあまりなく、悲しく、ときに滑稽ではあるけれど、それでも輝く時間のきらめき、みたいなものが感じられる作品だったので、観劇後の感覚はずいぶん異なってはいるんですけども。

平原テツさんの役を窪田くんだったらどうだったかっていうのも気になるところではあるんですけども、先に書いたような理由でテツさん以外のキャストがちょっと想像できない、となったところもありましたね。

しかし振り返っても豪華な、豪華すぎるキャストだな。鈴木杏の使い方贅沢過ぎる!と思ってしまったが、しかしなお輝く鈴木杏鈴木杏ぢからよ。女性陣それぞれにキャラクターの立て方がはっきりしててお見事だったな。橋本さんは基本的に受けの芝居が続くので、それだけに最後のシーンが胸に迫る。今井隆文さんの絶妙に人の神経を逆なでするようで、でも最後の一線を越えず許容されているキャラクター造形も印象的でした。