「吉例顔見世大歌舞伎 昼の部」

  • 歌舞伎座 1階7列7番
  • 脚本 青木豪 演出 宮城聰

マハーバーラタ戦記。2017年の初演は残念ながら拝見しておらず、観に行ったシアターゴアーな方々の絶賛評にハンケチ噛んでくやしがっていたので、再演発表されて「今度こそは見たいな」という気持ちはもちろんありつつ、しかし11月は小倉城中村座遠征すっからな…むむむ…と悩んでいた私。その背中を押したのは初演で七之助さんが演じた鶴妖朶を芝のぶさんが演じるというその一点!芝のぶさんがご自身のブログで熱く語っておられるのを見て、「こりゃ芝のぶさんのためならエンヤコラだぜー!」と日帰りで突撃してまいりました。

マハーバーラタ戦記ミリしらの状態で、イヤホンガイドも借りずでしたが、非常にわかりやすく整理されてて飲み込みやすい物語になっていて助かった。このあたりは外部の脚本・演出が入っているがゆえの効果もある気がします。ちなみに私の後ろの席の方がインド神話通らしく、幕間にこの人物がこう描かれてるのはどこどこからの引用では?とか専門的な見解を楽しげに話されてて、そういう層にリーチしてるのは素晴らしいことだなと思いました。

しかし、これは鶴妖朶さま人気出ちゃうのわかるわ。単なるヴィランに留まらない奥行き、虐げられてきた、簒奪されてきた者からの逆襲の怨念と、迦楼奈の存在によってはじめて「孤独」を知る繊細さを併せ持つ超魅力キャラ。芝のぶさん、もともと声の良さが際立つ方だけど、本当、準主役といってもいいお役で、終始その存在感、芝居心を如何なく発揮されててただただうっとりするばかりでしたよ。

両花道を使った渡り台詞もあって、絵になる場面が多かったのも良かったな。菊之助さんの迦楼奈、清廉で主人公に相応しい佇まいだし、隼人さんの阿龍樹雷もかっこよかった。かつての同士が袂を分かって命のやりとりをするのが大好きマンとしては、このふたりが最後の決戦に至る前にもうひとつふたつ、ふたりの間にケミストリーを感じるエピがあったらなお燃えたよなと思う(原作度外視過ぎ発言)。

音楽も印象的で物語もしっかりまとまっており、長時間ではありますが集中して楽しく観ることができたなーと思います!