「レイディマクベス」

  • 京都劇場 2階2A列13番
  • 作 ジュード・クリスチャン 演出 ウィル・タケット

天海祐希さん主演で「マクベス」ではなく「レイディマクベス」…マクベス夫人にフォーカスを当てた完全新作。マクベス役がアダム・クーパーなのも話題を呼びましたね。

シェイクスピアの書いた「マクベス」の中でマクベス夫人は固有の名前を与えられていない、というところからの掘り下げという視点は良いし、彼らの娘が語るというのも面白いなーと最初は思ったのですが、完全新作なだけあって「マクベス」をなぞるようでなぞらず、ただし「マクベス」に負けず劣らず大量のダイアローグで押し進めるので、これはなかなか…なかなかだぞ!と思わず身構えちゃいましたね。

しかし、逆にっつーかなんつーか、シェイクスピアってやっぱすげえなと思ったな。台詞の量だけで言えばたぶん原作の「マクベス」の方が多いと思うが、あの長広舌を聴かせる台詞の力、美しさがやっぱハンパねえなと。

紛争のただ中におり、他者の命を奪う覚悟のないものは斃されていくべきだという思想の中で描かれる「戦争」についての台詞は、ウクライナはもとより、イスラエルパレスチナの現状を思い出さずにはおられず、できればそうした今の世界とコミットするシーンを強く打ち出した方が作劇としてはインパクトがあったのではないかと思ったりしました。最後の王冠の簒奪は空しさだけが際立つという点では好きな見せ方だったかな。

天海祐希さんは出ずっぱり語りっぱなしで、ずっと観客の目を惹くオーラはさすが。アダム・クーパーと組むんだから、もっとアダム・クーパーならではなところを見せておくれよおとも思いましたが、おふたりの並んでる姿は非常に絵になる。鈴木保奈美さん、要潤さん、栗原英雄さん、みんな声が良くバランスのいい座組だなと思いましたが、なかでも個人的には宮下今日子さんの硬質な芝居が実にハマっていて大好きでした。