「RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~」「VIOLETOPIA」宝塚星組

  • 宝塚大劇場 2階5列84番
  • 脚本・演出 谷貴矢/作・演出 指田珠子

大ヒット映画を早くも宝塚が「それウチにやらせてください!」と手を挙げ、日本公開からほぼ1年で宝塚での上演が決まるというスピード感すごい。大劇場での日程がお正月だったので、これは観たいな~と思いつつ、ありとあらゆる先行にフラれ諦めておりましたが、お友達から御縁をいただき観に行くことができました!ありがてえ。ありがてえ。

長大かつ壮大な映画のストーリーをビームを主軸にうまいことまとめており、宝塚ならではのお約束を入れ込みつつも原作の大事なエッセンスは極力活かす、という作劇だったなーと思います。いちばん感心したのは、インド映画における場面のイメージを歌とダンスで繋げてより印象深いものにするという手法がめちゃくちゃ宝塚と相性がいいこと。映画においては「そうはならんやろ」「なっとるやろがい!」といわんばかりの想像の斜め上をいくショットの連打に酔いましたが、そういう押し出しは難しいかわりに「ドスティ」や「コムラム・ビーム」などの歌の場面は実に良く仕上がっていて、役者の魅力を前面に押し出すという意味でも宝塚との親和性が高いんだな~と。RRRのヒットを受けてすぐさま舞台化に動いたプロデューサーは慧眼ですね。

一方で、RRRは植民地支配からの独立を描く作品で、かつ体制側にレイシズムの色がはっきりと描かれているわけだけど、こうした題材との相性はちょっと疑問符だなと思うところもありました。例えば歌舞伎においても、男性が女性を演じるにおいてある種培われてきた記号的な演技があって、それは宝塚でもたぶん同じなんですよね。で、そうした記号的なお約束と、多様性を担保すべき演目とはちと食い合わせがよくないという印象。

それにしても、「ナートゥ・ナートゥ」は圧巻でしたね。客席も「待ってました!」と声にこそ出さねど、観客の心が一気に前のめりになったかのような高揚感がありました。ダンスのうまさ速さだけでなく、あの舞台いっぱいにひろがった面々が一心不乱に踊る様子というのはもはや感動を超えた何かであり、物量で殴られるってこういうことか…!とただただ魅入るのみという時間だったなと。あれができるのはまさにこの劇団の強みですね。底力がえげつない。普通の舞台じゃあれは無理です。

かつての同志が袂を分かって命のやりとりをする、というシチュエーションが三度の飯より大好きマンとしては、ビームが誤解をしたままラーマを手にかけそうになるあの場面がなかったのは残念でしたが(お前の性癖を押し付けるんじゃない)、そこはあれだけのファンを生んだ映画だから、どこを切っても残念に思う人はいるでしょうし、個人的には脚色はいい仕事をしてらっしゃったなという印象です。

例によって役者さんのお名前をほとんど存じ上げず申し訳ない限りですが、ラーマ役の暁千星さん、後半になればなるほどかっちりした御髪が乱れ、乱れてからが本番です!とばかりに色気びしゃびしゃになるタイプのお方で、そんなの好きに決まってるじゃんねえ~!とホクホクしながら見ておりました。

「VIOLETOPIA」、どこかファンタジックで王道、華やか!というよりちょっぴり蠱惑的…という雰囲気のレビューで好きな感じでした。あとレビューでいちばん見入ったのが群舞なんですよね。なんか圧と気合がすげえというか、うまく言えないですけど演者の迫力に押される感じがあって、見ごたえしかなかったなと。そういう意味でも、RRRとの相性もこの組ならではの良さがあったのかもな~と思ったりしました。楽しかったです!!