野田地図新作。今回の公演、いつかそんな日が来るのではないかと思っていたけどとうとう来た、松潤が野田地図初参加ということで、いやいや…チケット取れるわけねーじゃん!!!とかなり投げやりでしたが、なんとか1枚引っ掛かりました。奇跡!
野田さんの新作は何より「こんなふうに見えていたものが、実はこうだった」的な展開をネタバレ知らずに観たいという気持ちが強いので、できる限り初日に近い日程で観るようにしてるんですが、今回ばかりは日程のわがままとか言ってられない。ネタバレ踏むの怖さに上演時間情報すら検索できてなかったですが、しかし今回はいつもに比べるとかなりストレート、事前の告知(カラマーゾフの兄弟モチーフ)の反映されぶりといい、観客に目隠しをしてどこかにつれていく、というような展開は影を潜めていたなと思います。
ということで以下具体的な展開に触れますが、この後の地方・海外公演をご覧になる予定の方はお気をつけください。
原爆のことを作品として描くのは過去にパンドラの鐘やオイルでもやっていて(「水を」、のところドキっとしたよね)、今回もう一度長崎の原爆のことを取り上げるのは意外といえば意外だったけど、パンフで野田さんが「またかと言われてもいいからもう一度やりたかった」と言っていてなるほどなと。私は野田さんがかつてサイモン・マクバーニーに、原爆をテーマにすることは自分の出自とは関係ないと語った時に、関係ないことはない、少なくともイギリスに生まれた僕はそれを描こうと考えたことはない、と言われてハッとした、というエピソードが印象に残っているんですが、その話もパンフで触れられてましたね。
個人的な感想を言うと、台詞のキレや、終盤の展開の、目をそむけたくなるけれど見なくてはならない、と思わせる力は、過去の作品の方に軍配をあげてしまうかな、というところはありましたが、この人類史上最大最悪の兵器の使用が「罪ではない」どころか、「英雄的行為」として整理されていることに、野田さんはたったひとりでも「違う」と言い続けたい、その意思の強さをもっとも強く感じたのは本作だった気がします。
今回は3兄弟の中で科学を志す威蕃(イヴァン)が日本側で原爆開発に着手していた様子が織り込まれていて、この「作る側」の視点でいけば映画の「オッペンハイマー」があるけど、今年の春先に上演されていた「イノセント・ピープル」はそのあたりをさらに掘り下げていたので、こういうふうに同じ題材のものが重なるときってあるよな~と思ったり。
例によってあまりキャストの全体像を把握しておりませんでしたが、今回メインキャスト8人で複数の役を掛け持つ人も少ないし、物語の焦点はかなり絞られてたんですね。松潤は過去のイメージよりも、骨の太い役者になったなという印象。キャストの中ではマイラブ小松和重さんはもとより、今回はなんといっても池谷のぶえさんの巧者ぶりが際立ってて舌を巻きました。うめえうめえ。
休憩なしの2時間20分、裁判仕立ての構図で時制もちょいちょい飛ぶけれど、あまり混乱することなく一気に見せてもらえてあっという間だったな~。そういえば、途中ザ・モップスの「たどりついたらいつも雨降り」が使われていて、第三舞台ファンとしてはソワソワしちゃいましたね…(笑)パンフによれば野田さんの次回作は来年夏、野田地図次回作は2026年夏とのこと。例によって鬼が笑いまくりますが、次回もチケット取れますように!と今から徳を積んでおきます!