「猿若祭二月大歌舞伎 夜の部」

「檀浦兜軍記 阿古屋」。玉三郎さんの阿古屋、拝見するのは三度目かな?今回、はじめてイヤホンガイドをお借りしてみました。もともと、NHKの「伝心」シリーズの阿古屋編が大好きで何度も見返しているので、ここが玉さまお気に入りの詞章…とか思いながら見るのが好きなのですが、イヤホンガイド借りたことでより楽しみを増した感じ。もっと早くに借りてみればよかったな。種之助さんの岩永、見事な人形振りでした。

「江島生島」。初見です。これが初見ということもあってイヤホンガイドを借りたというのも理由の一つだった。おかげで事件の背景含めとてもわかりやすかったです。江島生島事件そのものはなぜか知っていて、というのも母がこの事件を題材にした小説が好きで何かの時に「それ江島生島じゃん」「なにそれ」と解説してくれたことがあったから。流罪になったあとの生島が江島を思いきれず、身も心もやつれはて、ここにいない江島の幻影を見る…というなかなか不思議なテイストの作品。菊之助さんの生島、七之助さんの江島で、絵面が…絵面が整っている…!とおふたりの絵になる度合いにくらくら。

「人情噺文七元結」。勘九郎さんが初役で長兵衛を。この役が勘九郎さんのニンかつったら実際そうでもないんだろうし、そこが似てる似てると言われてても勘三郎さんと勘九郎さんの個性、醸し出すものの違いなんだろうなとは思います。でも、ニンじゃないからってこの役に勘九郎さんが一種の憧れとか、そういうものを抱かないかつったら絶対そんなことないわけでね。

今回、私がすごくいいなと思ったのは文七と行きかう大川端の場面ですね。まず、鶴松さんの文七がすごくよい。もともと、というかそれこそ清水大希くんだったころから、彼には抜群の芝居のうまさがあって、それが勘三郎さんに見込まれた理由のひとつだと思いますが、こうした役をやるときの情感の喚起力というか、客が思わず入り込む芝居をするんですよね。勘九郎さんの話の受け手としてのうまさと相性がよく、このコンビならではの良さがふんだんに感じられました。

七之助さんのお兼、このひとこんなにきれいなのにコメディエンヌとしても抜群のセンスがあるんだよなっていうのを改めて思い知らされる楽しさでしたし、萬壽さんのお駒、芝翫さんの和泉屋も含めよく仕上がった一幕だったなと思います。