「LOVER SOUL」   泪目銀座

渡辺いっけいさん演じる吾妻さんが片桐さんに向かっていう「心配だよ!」の激しい声が耳に残って離れない。「自分じゃなくて良かったって思う、だから僕らは友達じゃない」というときの寂しさを湛えた声が離れない。「愛していますよ」というときの、「ああ、よかった」というときの、暖かさに溢れた声が耳から、心から離れない。そんな芝居。

末期癌の患者が数多く入院している病棟の、一夜の喫煙室が舞台。病人同士、病人と看護婦、看護婦同士、看護婦と医者など多くの関係が描かれる。正直伏線は伏線だとわかりやすいし、展開ももちろん読めるんだけれども、それでもなお人の心を動かす+αがあって、私が思うにそれは役者さんの力量に負うところも非常に大きいような気がするんですよね。福島さんはよく三谷さんと並んで語られることが多いけれど、三谷さんの「そこでそうなりますか!」というようなトリッキーなまでに完璧な脚本では、私はないと思うんだよなぁ。その代わり、役者さんの力というか味というか、そういうものを発揮させる余裕というか、いい意味での隙間が福島さんの本にはあって、それが役者さんの力をうまく引き出していると思うんですよ。

今回の芝居は本当に出てくる人みんな役者さんがきっちりはまっていて、そしてもう渡辺いっけいさんと相島さんのうまさの前にはなんかもう・・・・言葉がないですわ。相島さんを舞台でお見かけしたのって久しぶりなんだけど(・・もしかして「罠」以来!?)やる役によってまったくキャラクターが違うあの変幻自在ぶりは健在。座れない、っていうことにものすごくリアリティを感じるあのパフォーマンスも凄いし。小林さんもあののほほんぶりは何ともいえずいい味だし、佐藤さんはキュートだし、森若さんの魅力、柴山さんの爽やかさも本当によかった。そしてなんといってもいっけいさんのあのうまさ・・・。もう脱帽です。常にものすごく静かに喋っているようでありながら、隅々まできっちり届くあの声。相島さんと二人のやりとりはもう号泣ですよ。つーか役者さんってほんとすげえよなぁ!と涙を流しながら感じ入ってしまいました。

次回は2002年9月だそうです。サザンシアター他、てあるので大阪も来てくれるかも!?今回初日にみたのですが近小あまりにも入ってなかったのでなんて勿体ない!と地団駄ふみそうになりました。大阪の方是非に是非に。

相島・いっけい両氏の巧者ぶりを堪能できて幸せでした。相島さんは固定的なイメージで語られることが多いけどサンシャインの中でも飛びきりのカメレオン役者さんだと思う。