- パルコ劇場 J列10番
- 作・演出 宮藤官九郎
観劇生活20年で初のやらかしをしてしまい、開演直前まで不安なまますごす。なんとか見ることができてよかった。
宮藤さん初のロックオペラに挑戦。ミュージカルもそうだけど、やっぱり音モノって普段の芝居と違う筋力が試される感じありますよね、演出として。普通の芝居に「歌もある」っていうのとはぜんぜん違う。
あの狭いパルコで、あんなアンプで鳴らされる音用には出来ていないコヤだけれども、きっちり宮藤さんが「ロックの音」を届けようと細心の注意を払ってらっしゃるなあと思ったし、そのためにマイクは必須なわけだけれど、聞こえにくいなと思うところがあったことをさっぴいてでもバンドの音がちゃんと鳴っていたのは個人的には良かった。
ロックオペラの形を全うするという目標があったからなのか、物語自体はきわめてシンプルといえるもので、最後は特にちょっとあっさりに過ぎるのかなあという気もしないでもないです。とはいえ、それぞれのキャラクターに宮藤さんらしい視点がしっかり生きているので、安い物語だな〜という風にはならないところはさすがだなあと。
劇中の歌で、何曲か歌詞が気になるものがあったのですが、パンフにも全歌詞は載ってなかったですよね?宮藤さんの「ロックの命日」とか歌詞見たかったなー。新感線のように折り込みチラシに歌詞を入れてくれるようなサービスはほしかったかもしれない。
キャストも宮藤さんの文法を把握している方ばかりなので、どんな場面でも安心して見ていられるなーと思いました。しかし、やはり阿部サダヲと森山未來には拍手を送らざるを得ないわけで、ところどころで爆発するサダヲの抜群のテンション芝居と未來くんの研ぎ澄まされた身体能力をこれ以上ないほどバカバカしいシーンで惜しげもなく使う心意気には脱帽です。何ヶ所かあまりにもツボに入る笑いがあって、今そのシーンを思い出してもふへへへと笑えてきてしまう。そうかと思えば二人とも芝居の切り替えはまったく見事だし、舞台人としての二人の表現偏差値の高さには参りますね。
松田龍平さんはこの中にあっては宮藤さんの文法に馴染んでないキャストになるわけだけれども、その馴染んでなさが役とマッチしているのでいい効果があったんじゃないかなーと思う。突然シニカルな口調になるとことか妙におかしかった。あと、個人的には宮藤さんの役どころがツボでツボでしょうがないんですけどどうしたら。すいませんねわかりやすくて。宮藤さん、こんなにギターを練習したことはないそうなのですけど、でもその成果はきっちり舞台の上に現れているのではないでしょうか。やーかっこよかったよ!