「悪霊〜下女の恋」

今年の春に再演された「マシーン日記」も12年ぶり、「悪霊」も12年ぶり。12年前「スズキビリーバーズ」でこの2本が連続上演されていたので、どうしても対で記憶している部分ありますね。どちらも4人芝居だし。マシーン日記はキャスト総入れ替えでしたが、悪霊は初演からのキャストでもある広岡由里子さんが続投。

改めて観てみれば劇中でタケヒコは下半身不随になるし母親は事故で死ぬしハチマンのみみずばれは全身を覆おうとしているし、それなのにこの中でドラマとして描かれるのはそこじゃない、というところがすごい戯曲だなあ…なんてことを思いました。母と子の、母と母の違う子の、子と母の違う子の人間関係の取り繕いようと、その取り繕いがほつれていくさまが淡々と描かれている。

「ついてこいや。悪霊に挑戦や」という台詞が妙に印象に残りました。悪霊ってなんやったんかなあ。タケヒコはハチマンを恨んではいなかったような気がするけれど、でもハチマンの顔は恨んでいたような気もする。「めめずばれ」が彼の顔を覆うことを願っていたのかもしれないなあ。

12年前に観たときも「どうしてお前の顔は…」のシーンがすごくこわかったんだけど、今回もやっぱりぞっとしたなあ。あのシーンの三宅さんの顔もすごかった。

松尾さん、宮藤さんときたタケヒコを三宅さんがやるというのが個人的にはこの再演最大の眼目でもあったんですけど、登場した瞬間ほわっ!と変な声出そうになりましたよ。やっぱすごいね役者だね。繊細さというか腺病質な雰囲気というか、タケヒコのめんどくささ、それがゆえの色気がしっかりあるものなあ。でもって、ハチマンをやった賀来賢人くんが予想以上の好演!!ハチマンは面白くなさを面白くみせる、的な部分もある役だけど、狙いすぎている感じがまったくなくてすごくよかったです。また舞台観てみたい。それにしても、広岡さんのかわらなさの凄みよ。本当に変わってなかったら多分「あー広岡さん変わったな」って思うだろうから、絶対に変わってはいるんだけど、でも「わーこの底知れ無さ全然変わらねええ!」と思わせるところがほんとすごいです。