「もっと泣いてよフラッパー」

オンシアター自由劇場時代の公演は未見ですが、DVDを買って見たことがあります。でもそれももうだいぶ前の話ですが。「上海バンスキング」などの作品のイメージや、キャストの構成、出演者が実際に演奏するというスタイルが、ウェルメイドだったMOPの印象と重なるところもあるんですが、実際に作品観てみると、そうだったもともとアンダーグラウンド自由劇場を本拠地にしていた人たちだった、ってことを作品を観ると思いだしちゃう感じありますね。

これも、パッと見ウェルメイドなようにできてるんだけど、その実まったくそうではないというところがあって、自分の中でもなかなかギアチェンジが追いつかないところもあったりして。ネズミたちのシーンや、死後の白い世界もそうなんだけど、それぞれのフラッパーな彼女たちのシーンの切り取り方も実はウェルメイドというよりも、意図的に断章を見せているところがありますよね。

トランク・ジルをオンシアター自由劇場でやっていたのはもちろん吉田日出子さんなわけですが、私もちろん松たか子さん大好きなんですけど、このジルをやるにはちょっと線の強さというか、骨の強さが出てしまったのかなあなんて思いました。あの最後の「火はいいの」。お松、たくましく生きていきそうなんだよなあ。いやもちろん歌も芝居も抜群のうまさでいうことないんですが。

フラボー嬢と旦那アスピリンも、サラと皇太子もそうだけど、すれ違ったり、やっと通じたと思ったらもう遅かったり、男女だけじゃなくて黒手組と銀色ファミリーの幼なじみの下っ端同士も、どこかで掛け違えてしまったボタンのような人間関係が現れては消える。最後に流れる彼女たちの「もっと泣いてよフラッパー」の曲の切ないのだけど、なぜだかあの歌で浄化されたような気持ちにもなるところがとてもよかったです。

メルマガでいつも「(稽古が)きつい、きつい」とぼやいてらっしゃる松尾スズキさんですが、いやーすばらしい存在感、そして端々で見事に笑いをとっていくそのセンス。正義のためなら何をしてもいい、と正義を振りかざす新聞記者ベンジャミンを演じた石丸幹二さん、あのハケるシーンのムダすぎる歌のうまさ、笑いました。笑いました。秋山菜津子さんもサラのターンでは圧倒的な牽引力と歌唱力で堪能しました。