「AMP 白鳥の湖」

バレエなんて実は観るの初めてなんだということに会場に着いてから気がついたすっとこどっこいな私。昔フラメンコの公演を観たことはあるけどフラメンコとバレエは違うだろう。(そりゃそうだ)いったいバレエってセリフがあるの?セリフがあるなら字幕もあるの?そんな超一級ド素人の私が、映画「リトル・ダンサー」で観たアダム・クーパーに興味を持ち、マシュー・ボーンの語るスワンの新解釈にひかれ、トドメは日参させていただいている小雪さんのサイトでの祭りにすっかり足下掬われて、気がついたらアダム出演予定日の大阪千秋楽チケットを握っていたというのだから世の中何が起こるかわからない。

席に着いてから白鳥の湖のオリジナルストーリーもよく知らないことを改めて思い出し(先に思い出しておけよ)、いったい話についていけるかと不安の汗が一瞬流れましたが、いやいや全くの杞憂。セリフがあるよりわかりやすい振り付け、わかりやすい場面展開!マザコン王子、美しくも自分大好き女王、当て馬女の子、意地悪執事。なんでこんなに踊りだけなのに飲み込みやすいのかと不思議になるくらいストーリーがどんどん入ってくる。踊りだけではなく物語を見せたいというマシュー・ボーンのパンフの言葉を読んでなるほどと膝を打ってみたり。しかも演出や舞台装置がゴージャス感はあるもののかなりシンプルでそれも非常に私好み。二幕の白い壁に影を大写しにして踊りを見せるところなんかゾクゾクきてしまったよ。二幕のラスト、王子のベッドに現れるスワンの群の怖さと、王子の傍らにすり寄り必死で彼を助けようとするスワンの姿には胸つかまれました。天井を仰いで絶望の啼き声をあげるスワンの姿に思わず涙涙。

そして何より目当てはスワン/ストレンジャーをやったアダム・クーパーな訳ですが、いんやもう、出てきた瞬間からそのオーラの違いにクギヅケ。なんてきれいな背中!なんてきれいな腕!二幕の、入水しようとする王子の目の前にあらわれる白鳥たちのシーンでもそれは如実なんですが、三幕のストレンジャーのシーンは輪をかけて凄い!!あれは堕ちるよ。かかりますよマジックに。エロというのはこの人のためにある言葉かと言わんばかりのフェロモン大爆発!なぜ鞭?なぜ革パン?なぜ革ベスト?なぜテーブルに押し倒す?つーか私を押し倒せ!!もうそんなイキオイです。あげくスワンとうり二つのストレンジャーの出現に平常心を失い戸惑う王子と強引に踊るダンスを見せられた日にゃ。爆発しましたよ。頭が?いえ煩悩が。炸裂しましたよ劣情が。夢に見る。これは夢に見ちゃうってんだ!!

音楽はもちろんチャイコフスキーの原曲で、クラシック知らない私でも耳に馴染みのある曲も多々あって楽しい。意外と笑いをちょこちょこ入れてくるのも個人的にマル。ゴージャス感のある舞台、わかりやすくもラストはなんとも切ない展開、いい男、いい男、いい男。これで満足できない訳がなかろう。なんだかバレエの見方としてはずいぶん間違っている気もしつつ、しかし最高の舞台を見せてもらった満足感で胸をいっぱいにしながら帰途についたのでありました。