「オケピ!」

初演の時、チケ取りをさぼって立ち見でしか見られなかった反省を生かし、今回は絶対良い席で見たいのよ!を合い言葉に頑張ったおかげか、人の情にもすがりつつ自分的には殆どベストだろう、と思う場所で二度見させていただくことが出来ました。まずは何よりもいろいろと声をかけて下さった方気を使って下さった方にお礼の言葉を。本当にありがとうございました!

「人生で起こることは全てここでも起こる」オーケストラピットでのすったもんだをリアルタイムで見せていく、三谷さんお得意のバックステージものをミュージカルにした「オケピ!」待望の再演です。

私にとって「オケピ!」という演目の魅力はなんといっても終盤のあの収束力に尽きるわけです。なので、キャストが変わったことはあんまり自分の中では大きい要素ではないのだなあと改めて思いました。いやもちろん、今回出た方が皆さん実力派だったってことが前提なんですけど。白井さんが真田さんのあとを継いでコンダクター、と聞いた時はあの大役を大丈夫なのか・・・!とちょっと心配したりもしたんですが、どうしてどうして、情けない中年男の哀愁という点では真田さんより良く体現していたかも。妻の浮気相手にまで相談しちゃう情けなさと、だけどなぜか皆に慕われる愛すべきキャラクターをしっかり魅せてくれました。天海さんのハープも初演とはまた違った味わいで良かった。もともとオンナオンナしてない方だというのもあってか、初演より小悪魔度は低めで、でも逆に初演の時はこんな女に騙されてバカだなあとしか思えなかったギターが、「本当に彼女のこと好きだったんだね」という視点で見ることが出来て新鮮だったかも。ポジティブ・シンキング・マンのリプライズがおかげで哀しいわ、でも最後は気持ちいいわ。寺脇さんのトランペットは、終盤に近づくにすれて「格好いいのが逆に格好悪い」みたいなキャラクターになっていて、コミカルな味があって私は好きです。今回初参加組で私が一番好きなのは瀬戸カトさん。ほぼ宮地さん当て書きかと思われた役を見事に自分のものにされてて、しかも歌はうまいしダンスはうまいし。「コンダクターーーーーーー!!!!」のオケピを締めるセリフも延びがあって勢いがあって素晴らしい!続投組は勿論、さらに初演よりパワーアップで良かった〜。小日向さんのあの可愛さはいったい何なんだろうか・・・ちょっと犯罪では・・・?と言いたくなるぐらい全編にわたって卑怯に可愛い。気になって♪の歌大好き!戸田さんのサバの缶詰は沁みるし、布施さんの歌は恐ろしいぐらい泣けるし。なんなんだもう〜。何回聞いても泣けるもんなあ。歌の力ってやっぱり凄い。

三谷さんの脚本は誰1人として「居なくてもいい人」がいない。存在感薄いよ、とみんなに言われちゃうヴィオラの彼は最後の最後の盛り上がりの主役だし、全員がかならずそこにいることに意味がある。このオケピの上で上演されていた、大先生の舞台とは全然違う。でもってみんな一癖も二癖もあるひとばかりだけれど、最後にはほんの少し前に進んで終わる。劇中で喩えられていたボレロのように。そんなの書ける人が他にいるだろうか?「どんな人間にもひとつは良いところがあるのと同じ、どんな出来の良くないミュージカルにも必ず『ただひとつの歌』がある」として歌われる「ただひとつの歌」から「オケピ!リプライズ」までの10分は私にとって至福の10分です。これは何回見ても飽きることがない。何回見ても、たまらなく気持ちがいい。あの心が沸き立つような気持ち、それこそが私にとっての「オケピ!」の魅力そのもの。初演のキャストも大好きだったけど今回のキャストも大好きだーー!またいつか見ることが出来たらいいのになあ。そう思わずにはいられない。

あとは全体の感想ではないんですが、ちょこちょこと印象に残ったことを。大阪二日目の17日、この日なぜかヴィオラの小林さんの声が完全に出なくなっていて、それはそれはもうキビしいことになってしまったんですよね〜。嗄れてる、なんてもんじゃなくて、二幕なんて殆ど息の漏れてる音しかしないという・・・観ているこっちも汗をかいてしまいました。でも、小林さんのソロの歌を一緒に歌う瀬戸さんが物凄く必死でフォローしていて、他の役者さんもみんな気合いを見せてくれて、舞台としては締まった良い出来だったです。でも小林さんは流石にカーテンコールで辛そうで・・・。
2回目は大阪千秋楽だったんですが、遊び心は十二分に発揮されつつも、遊びすぎず崩しすぎず、本当に良い楽日でした!驚いたのがパーカッションの小橋くん!この日の小橋君の気合いがものすごくて、普段はなんだかマザコン風味でやーね、な「パーカッションの理想と現実」がすごく良かったんですよ〜!私この曲で泣きそうになるとは思いませんでした。ポジティブ〜の川平さんでも泣かされそうになるし。布施さんの「オーボエ奏者の特別な一日」は初演も再演も変わらずに本気で涙を零してしまうんですが、再演は特に、演奏のあとの「ここは素晴らしい職場です」の言葉でまた一層泣けてきてしまうという・・・。インストのサックス奏者の活躍、は相島さんのどたばたが大好きなんだけど、加えて最後にちゃっかりタクトを持っている小日向さんが可愛すぎ(笑)

初演の時、一番すごい!と思ったのが、舞台が終わった瞬間に沸騰するような勢いで湧き起こった拍手と観客席。ああ、こういうのが本当のスタンディングオベーションなんだなあ、と鳥肌が立つ思いでした。今回の楽日、3000人もの地鳴りのような拍手を役者さん達はどういう思いで聞いたのかしら。川平さんはビデオを回し、寺脇さんはふざけ、小橋君はタオルを投げ、温水さんはカツラを投げ(爆)。私はこの楽しかった私の思いをキャストやオケピの方やスタッフの方が思い知るまでやめないぞ、という気持ちで手を叩いていました。ちょっとは伝わったかしら?だとしたら嬉しいのだけど。

  • 2回目 2003/05/31 LsideDD列32番