「ミス・サイゴン」

  • 帝国劇場 1階Q列38番

いやー見てきましたよミス・サイゴン。初帝劇。筧さんのミュージカルデビュー。
・・・何から書いたらいいものやら。

えっととりあえず帝劇自体初めて足を踏み入れたわけですが、一階席後ろ目からの観劇でしたが思った以上の見やすさに驚き!!傾斜はそれほどきつくないと思うのにストレスなく舞台を見れるというのはすばらしい。劇場全体にすごくいい雰囲気があってそれにもちょっと感動した。使い込まれている、良い意味で「手垢の付いた」劇場だなあ〜〜!!という感じ。この舞台を筧さんが踏ませてもらえるなんて・・・と感動。
お、そうだそうだ、私が観劇した日のプリンシパルキャストは以下の通り。

エンジニア 筧利夫
キム 新妻聖子
クリス 石井一孝
ジョン 今井清隆
エレン 石川ちひろ
トゥイ tekkan
ジジ 平澤由美

えーととりあえず筧さんのみに絞った感想。結構いっぱいいっぱいだったんでないかな?筧さんがいっぱいいっぱいになることってあんまりないので貴重なもの見た気分。筧さんの挑戦を見届けているんだわ!という感じがあって、こっちも色々ドキドキでした。背の低さがおそろしく目立つけど、動きのキレの良さでカバーって感じ。バンコクに移ってからのシーンで赤ジャケにグラサンで出てきたとき、あまりに胡散臭かったのか前方客席から笑いが起こってました。歌については、ファンであるがゆえにまったく期待しておりませんでしたので(ひどい)、ああ、意外とイケててよかった!という安堵感。というかね、筧さんのは歌という感じじゃないんだなあ。セリフを節付きで言っている、という感じが先行するので、歌による気持ちよさ的な部分はあまりない(エンジニア自体にそういう部分が少ないのかもしれないけど)。基本的に芝居重視な役作りのような気がした。でも、「アメリカンドリーム」ではアメリカを夢見て、でも決して届かない哀愁もあって良かったなーと思う。筧さんのダンスも見れたし。帝劇という空間をもっと自分のものに出来ると違うエンジニアが見えてくる気もするので、そのあたり後半10月の観劇に期待。

でもって全体の感想ですけども、うーん、基本的にすごく苦手な作品だということがとってもよくわかりました。悲劇だからじゃなくて(むしろ私は悲劇好き)、展開的にも納得いかないしキャラの造形的にも納得できない部分が多いのですな。クリスは苦しんでいるか?もちろん答はイエスだろうけど、エレンかキムかという選択において彼の選択はあまりにも過去を自分と切り離しすぎなんじゃないかと思ってしまう。戦争というものがあったとてどんな過去の自分も自分だろう。「あの時は・・・」なんていうセリフは聞きたくなかったな。そんな風に簡単に切り離せないことにこそ悲劇はあるんじゃないのか?エレンと二人で「援助しよう」さらに「アメリカンスクール」という展開になったときは背後から跳び蹴りを喰らわしたくなった事は内緒だ。キムにしても同じ。最初に「夢が」とか言っているからなにか彼女には自分を支える強い夢があるのだろうと思っていたらそれはいつしかクリスへの愛へ変わり、タムへの愛が加わり、トゥイを殺したことに責めさいなまれていると思いきや「私にはクリスがいる!」で結婚式の衣装着てこれでなにもかもうまくいくってなもんだ。最後に死を選ぶ展開についても、もっとキムの意思を統一して書いてくれないとこちらの気持ちが乗っていかない。クリスのことを信じたいけど信じられない時もある、でもタムにだけはどうか幸せになってほしいという前振りが欲しかった。その上で現実を知ったときの彼女の逡巡やそれを超えたところにある決断を上手く見せて欲しかったなあ。

これ以上書くと芝居の感想を離れた不穏当な発言が多くなってしまいそうなのでこの辺で打ち止め。

歌の中で好きなのは「世界が終わる夜のように」と、「ブイドイ」、でもって「アメリカンドリーム」かな。特に「ブイドイ」は王道ミュージカルにしては珍しい客席方向へのボールなので印象的。でも、これももっと上手く使えないのかなあと思ったりね。第二幕の初っ端なんだけど、映像ももっとインパクト持たせた使い方が出来たんじゃないかな?オープニングの演出はかなり好き。あと第二幕でのサイゴン陥落を描くシーンはよかった。こんなに色々腹立つ腹立つと言っている私でさえ「ああ、キムをその中に入れてあげて!」と思わず祈ったほど。ほんの一瞬のボタンの掛け違えがこんなとこまで来てしまったのか、と思わせて切ない。

キャストの中では新妻さんと石井さんが印象的なんですが、石井さんどうしてもちょっと若さが足りないというか、いい年した大人が!みたいな感じがあったのがなあ〜。もっと若さ爆発のクリスだったら前述の感想も違ってくるのかな?でも歌はすごく良くってしびれさせてもらいました。安定感も抜群。新妻さんの歌も心に残るものがあった。今井さんのジョンは演説台に立つと貫禄ありすぎて何者!?みたいな感じ。

アメリカンドリームとか、実は市村さんのも橋本さんのもすっごく見たい!と思ったしクリスとキムの組み合わせで毎回違うものが生まれてる感じもあって興味は尽きないのですが、話がどうしても苦手なのとあの音楽に乗せたセリフにどうしても「普通に喋れ」と突っ込みたくなってしまうあたり・・・まだまだ修行が足りませぬ。