お疲れさまでした、筧さん

23日に8月から4ヶ月のロングラン公演を行っていた「ミス・サイゴン」が千秋楽。筧さんも22日に楽日を無事迎えられたようで、ともあれ無事完走されたこと、まずはめでたい。
私は残念ながら楽日を拝見できませんでしたが、「かのこの劇場メモ〜半券の余白」さまの方で非常に素晴らしいレポートがあがっておりますので、筧ファンの方には必見だと思います。かのこさまは8月下旬から二桁を超える回数「ミス・サイゴン」をご覧になっていて、またその度ごとに非常に面白くかつ鋭いレポートをあげて下さってます。こちらも必見、いや、必読。

ファンの中でも賛否両論あるところでの筧さんの「初ミュージカル」挑戦は終わったわけですが、2回しか拝見していないにせよ、10月に見せていただいたときに筧さんなりの「エンジニア」を見せて貰ったなという思いがあったので、個人的にはとても満足してます。

以前、東宝の別の大ヒットミュージカルを見させていただいたときに、「やっぱりミュージカルって、歌(楽曲)だよなあ」ということを非常に強く感じたんですが、その後他のミュージカルを色々見るにつれ「いや、強ちそうとばかりも言い切れないのではないか」とも思い、でも「ミス・サイゴン」を8月に見たときは「やっぱり歌だよなあ」とまた思ったりして、ミュージカル初心者の私は右往左往しているのですけれども、まあ「そうでもあり、そうでもなし」といったところに結局は落ち着くんじゃないかと思います。
筧さん自身も多分いろいろと手探りでこの4ヶ月、自分のエンジニアを探してらっしゃったのではないかと思いますが、雑誌のインタビューでも再三仰っていた「音程」というものへの回帰、というのが私はすごく印象に残ってます。音程を大事に、というのはミュージカルファンの方からしたら「何を今更言うまでもない」ことだと思いますが、芝居の中で役のテンションがあがってしまうとその勢いのまま歌に入ってしまい空回りがちになる、かといって音程を保つことに汲々とすると役のテンションが疎かになるという、これは今までストレートプレイ一本槍できた(しかも、テンションあげてキープしてなんぼ、という舞台を数多く踏んできた)筧さんからすると、今まで使っていなかった筋肉を使うようなもので、そしてそれは「ミュージカルはやっぱり歌である」ということへの「そうでもあり、そうでもなし」という筧さんなりの回答のような気もしたりするのです。

筧利夫という役者にとって今回の「サイゴン」は間違いなく「挑戦」で、いやいや、一役者の「挑戦」なんぞ興味はないよ、完成したものを見せてくれ、という意見だって当然あるかと思います。でも、観た人によって好き嫌いははっきり別れるかもしれないけれども、少なくとも「お金の取れるレベルの挑戦」を見せてくれていたことは間違いないところで、それはご本人の精進の賜物だよなと思います。好き嫌いが別れてしまうのは、ある意味当たり前の話ですもんね。
・・・と、はいうものの、私もニンゲンですのでいつもそんなに割り切っているわけでもなく、どうしても筧エンジニアに好意的なレビューをネットで探し回ったりしてしまうんですけども(笑)

さて、来年はやはり舞台の予定はないのでしょうか。ここ3年毎年1本ずつ、秋から年末にかけて舞台を楽しませていただいていたので、来年も1本ぐらいは・・・と期待したいところです。これは夢というか妄想に近い話ですけども、いつか筧さんにシェイクスピアの「リチャード三世」に挑戦してみてもらいたいな、と思ったり。古田さんにリチャードを、という声は結構聞くのですけども、個人的には筧さんの方がよりイメージだったりします。「口先で奇麗事を言う今の世の中、どうせ二枚目は無理だとなれば、思い切って悪党になりこの世の徒な楽しみの一切を憎んでやる」なんて、筧さんの口から聞いてみたいわあ。

買ったまま聞いていなかった「ミス・サイゴン」ロンドン版CDの封を開けながら。
お疲れさまでした、筧さん!!!