「シンデレラ ファイナル」青い鳥

  • MIDシアター  F列2番
  • 作 市堂令  演出 芹川藍

1982年の初演、1985年の再演は当然のように未見。30周年記念ということでリクエストナンバー1だったこの作品が再演されることになったそうです。
80年代的、という言葉はどちらかというと作品を揶揄するものとして使われることが多いように思うけれども、私は敬意をこめてこの芝居を80年代的だと言いたい。さらにこの言葉をいうといまやドン引きされそうな気配すらあるけれども、これはやはり「自分探し」の作品であると思う。

しかし青い鳥の作品というのは(当たり前と言われるかもしれないが)創り手達の思想、感性がそのまま舞台に上げられるようなものであるので、約20年前に描かれた彼女らの「自分探し」と、今の彼女らの「自分探し」は当然違うわけで、そのあたり彼女らの「いま」が立ち上がって来ていないように感じたのはちょっと残念な点。でも、「何かの予感」だけを手に待って待って待ち続けるシンデレラの姿というのは20年前であろうと今であろうと有効なモチーフだよなあ。予感を叩き壊してしまうシンデレラの姿へのインパクトは多少薄れてしまったかもしれないけれども。

芹川さんの演出がやっぱり私は凄く好きで、冒頭の雛壇に役者が立ちstand by meが流れるシーン(ホリゾントがバックだったらきっともっと良かったろうにと思うと、近小が無いことが口惜しい)、突然始まる刑事ごっこへの切り換え、照明の色や音、そういうものが「ぴったりくる」という感じがある。ドン・コビッチョ先生のコーナー(コーナー?)は、青い鳥は結構こういうシーンが良くあるのだが、じつはちょっと苦手でそこだけ「チャンネル合わないなあ」とどうしても思ってしまうのですが、今回は期待値のグラフの話がさりげにすごく効いていたのでそのアンバランスさが効果的だなあと思った。あと、シンデレラが床を磨きながらちょっと難解な台詞を言うシーン。哲子がラストで日記を読みながら音が大きくなっていくシーンもそうなんだけど、こういうのが大好きなんだ、私。台詞を理解している訳でもないのにうっとりしちゃう。

天光さんは実に実に声の良い方で、彼女が台詞言うだけでちょっと聞き惚れちゃうみたいなところがあるんですけども、それでも私の一押しはどうしても葛西さんなんだなあ。あー好き。あの刑事ごっこでの一人で走り出したテンションがもうたまらない。あそこのダンスの芹川さんも格好良かった。

「自分探し」の話だと書いたけど、青い鳥というのはある意味ずっと自分しか探していないと言ってもいいと思う。彼女らには「世間」というものがない。世間で認められるとか、世間からどう思われるかとか、そういう部分が全然ないのだ。創立メンバーのみなさんはもうとっくに50の坂を越えた方たちばかりである。なのに、私が出会った14年前と変わらぬその凛とした立ち姿の美しさに私は思わず感動した。自分ってものを見つめ続ける決意というのは生半可なものではないよなあと感じ入ってしまったことです。