「四月大歌舞伎 昼の部」

「ひらかな盛衰記 源太勘當」

梶原景時って、本当によく出て来るねえ〜・・・と妙に感心。いい役だったり悪い役だったりするけど、その「どうともとれる」あたりが題材にチョイスされる要因なのかしらん。この演目の主役は景時じゃなくてその息子なんだけど、「ああ、武家の息子って・・・」というあらすじではありました。物語そのものよりも弟平次との対比が結構面白かったかな。典型的なダメ弟くんで、兄の恋人に横恋慕までしてる。先陣でひけをとったというだけで切腹だのなんだという話自体がすっげえなあと私は思ってしまうのだが、それを盾に兄を母親の前で手にかけようとする平次もすごい。絵に描いたような男前の海老蔵さんがこういう役をやるのも珍しいよね。愛嬌があってすてきでした、團十郎さんといいこの親子は本当に愛嬌があるなあ。勘太郎くん、もとは役柄は千鳥だったんだけど、急遽主役の源太に。真面目で優等生なお兄ちゃんという感じで、こいうとこにも人柄はそこはかとなく出るのかしら、と思ったり。母延寿とのやりとり、千鳥とのやりとりがよかったです。

京鹿子娘道成寺

苦手?の舞踊、でもいろいろ新鮮で楽しく拝見しました。所化の「まい尽くし」とか楽しい場面も多かったのは意外。海老蔵さんと勘太郎くんも所化で出ていて、まい尽くしで笑ったりしているのがなんか可愛かった、それにしても二人ともやっぱり背が高いですね。白拍子花子が花道で踊るところ、所化は舞台中央で正面を向いて居るんですけど、ひとり勘太郎くんだけが花道を凝視していたのがものすごく目立っていて、ああ、お父さんの芸見ておきたいんだなあという想いにちょっと胸が熱くなったりして。
後半になるにつれ踊りがだんだん取り憑かれたようになるのが好きでした。私はどうもああ、きれいね〜っていうだけよりも、なんかダークサイドに転化していくところにぐっと来るみたいです。あと舞台がちょうど桜の季節と重なっていて、やっぱりこういう時期に見たい演目だよなあと思ったりして。

「与話情浮名横櫛」

見染の場での仁左衛門さんと玉三郎さんが何とも言えずすてきでうっとりだった。ふたりの「あっ・・・」という感じがすごく伝わってくる、まさに一目惚れな空気がよかったなあ。玉三郎さんの「いい景色だねえ」もいいし、そのあとの仁左衛門さんの羽織を逆さまにかけて「わかってるよぉ!」ってのも可愛かった。っていうか仁左衛門さんはこういう可愛さを出させると天下無敵じゃないだろうか。源氏店は最初の、お富さんが番頭の藤八をからかうシーンが面白かった。玉三郎さんの徒な女っぷりもすてき(でも個人的には、こういう役は福助さんのほうが好きかもと少し思ったりした)だし、藤八におしろいを塗るところとかなんかちょっと笑いこらえてる?みたいな感じで和んだなあ。見染と源氏店の間の場は上演されないんですね、なんか残念。だってアツアツの二人、落ちていくふたりがどんなだったか興味湧くじゃないですか、あんなにすてきな出逢いなんだもん。
ところで勘太郎くんはこの「切られ与三」より、「蝙蝠安」の役の方が「断然面白そうだしやってみたい」そうですよ。お、おもしろいひと・・・(笑)でも私も好きですけどね、蝙蝠安。左團次さんの蝙蝠安、憎めない感じが出ててよかったです。