「七月大歌舞伎 昼の部」

  • 松竹座 8列16番

「寿曽我対面」
苦手ジャンルかなと思ったけどかなり集中して面白く見れました。勘太郎くんが出てると集中力が違う(私の)。染さまが弟の五郎で勘太郎くんがお兄さんの十郎というキャスティングが面白いなあと。歌舞伎座で梅王丸見た後だからかもしれないけど、逆の方が想像しやすいキャストではありつつ、でも十郎素敵だったからもう良し!染さま、「苦手」だと仰っていたけど、後半は乗ってる感じがしました。ああいう役って難しいだろうなあと思いながら見てしまった。あと、孝太郎さんの舞鶴がなんかすげー存在感あって良かったです。それにしてもまた出てる、梶原景時。歌舞伎を見に行ってこの人の名を聞かない日ってないんじゃないだろうかと思うほどの頻出率。ある意味すげえ。

「源太」「藤娘」
苦手の舞踊でしたが巧者お二人のおかげで面白く。とかいいつつ源太で何を踊っているのかいまいちよくわかっていなかったのですが。ってこいつも梶原一門かい!勘三郎さんの藤娘、すごくかわいかった。あと舞台一面の藤の花にちょっとうっとり。好きなんです、藤の花・・・。

「口上」
個人的には歌舞伎座はお伺いすることが出来なかった三津五郎さんの口上がいちばん楽しみでした。それにしても松竹座、間口狭いーー!我當さん翫雀さん進之介さん愛之助さん孝太郎さんのに松嶋屋の方々がなんだかきゅーーーーっと寄っていて裃の端がぶつかりまくっていてどうしたもんかという感じだった。三津五郎さんと扇雀さんのご挨拶は簡単に言うと「大阪中座の巡業中はいろいろ悪さもしたがちょっとここじゃあ言えねえな」みたいな感じ(まとめすぎ!)福助さんはお二人の息子を若虎に喩え、うまく「猛虎」という単語を口上に組み込むことに成功していた、さすが阪神ファン仁左衛門さまは「素敵な」を短い口上の間に10回は仰ってたんじゃないでしょうか。でも拍手の量はさすがに圧倒的(勘三郎さんをのぞけばだけど)。勘三郎さんの挨拶の中の「大阪の街がなければ、今の僕はいません」というお言葉に深く感動。

「伊賀越道中双六 沼津」
これこそまさにまったく期待していなかった一幕。歌舞伎ではよくある「実は親子だった!」「がびーん!」「実は兄弟だった!」「がびーーん!」という「実は」シリーズがちょっと苦手なので、これもあらすじ読んだときは警戒してた。それなのに
ボロ泣き。
いや「実は、なんてそんな都合のいい話あるかよ」とか、そういうのってどうでもいいのね。むしろ物話なんて後付け上等、それぐらいの感じだよね。だってもう、内心ツッコミたいと思ってたはずなのに、そんなことどうでも良くなっちゃってたからねえ。ただひたすら十兵衛の気持ち、平作の気持ちにびしばし打たれちゃって、たいへんだったもん。
十兵衛の仁左衛門さま、素晴らしすぎ。前半のいかにも人のいい旦那っぷりも素敵だし、千本松原での平作とのやりとりなんて、魂入りまくり。着物を掛けてあげるところ、笠を上からそっとかけるところ、ついに取りすがって泣いてしまうところ・・・もう泣きすぎて頭痛い。
勘三郎さんの平作、そんな年じゃないのに見事な役作り、そしてこちらも見事の一語。襲名の中で勘三郎さん絶好調だなこりゃ!と思ったの初めてかもしれない。それぐらい、この平作よかったです。
仁左衛門さんと勘三郎さんの息がまたぴったりで、前半はほんと面白いシーンの連続。だから余計最後のシーンが哀しいんだよ・・・。
福助さんは、私は福助さんの演じる徒っぽい感じのおんなのひとが大好きなので、お米みたいな純情一路な女性ってのは新鮮だなーと最初思っていたのですが、後半になるにつれどんどん違和感がなくなっていく。十兵衛を見送った後父に許しを請うとことかすげーよかったです。