「猫堀骨董店」ドラマシティプロデュース

  • シアタードラマシティ 8列26番
  • 作・演出 中井由梨子

ひとりの男が息せき切ってとある骨董店を訪ねる。「この間売ったものを買い戻したいんです。」なのに、その男は自分の売ったものが思い出せない。
鏡の向こう、どこにでもある扉のあちら側、日常のなかにある別世界への「隙間」を行き来するうちに男の売ったもの、そしてその骨董店の不思議が次第に明らかになってくる。
以下結構ネタバレかも。

「猫堀骨董店」なんてなんだか可愛らしいタイトルですけどお話はこれかなりダークでしたよ。もうどっちかっていうと「世にも奇妙な物語」。

自分の売ったものが何か思い出せない、それを探すうちにその骨董店の謎が明らかに・・・という話の大枠はすごく好みで、そのあたりの話で引っ張る中盤は面白かったんですが、もうひとつの物語の筋であるところの「売った中身」に関するあれこれ、つまり主人公と恋人の別れの真相というようなあたりが、かなりええええーーー、という展開。つーか、みんな死にネタ好きなのな。私はもう世の中に死にネタが溢れすぎていて食傷気味なんだが。人が乗り越えなければならない過去ってもっと身近で切実なものでいいんじゃないの?そんなにドラマティックにする必要あるの?ってちょっと脱線しすぎですね、すいません。

人間にも古くなってからっぽになったものがある、という話をしたあとの「ここは『骨董品店』ですよ」の店主の台詞はぞっとするものがあって非常によかった。

世界初のアカペラミュージカル、ということで、すべての音を人間の声で、という試みでしたが、これ自体はなかなかに可能性まだまだひろがるなーという発見をさせてくれたと思う。ボイスパーカッションですべてのリズムを刻むのがすごかった。歌は皆さん自家薬籠中の物という感じで聞き応え充分。中でもひとり、ど迫力の容姿&声を持つ女性がいて、この人は芝居も好みだったなー。ゆうきさんという方らしいです。劇中でALL THAT JAZZをアレンジした曲でボーカルをとってたけど、このひとにママ・モートンをやらせてみたいとちょっと思った。

芝居の面では一味足りないかな、という役者さんも結構いたんだけど、その中で独特の存在感で確実に笑いをさらっていくえん魔さんはさすがでしたね。