「壽初春大歌舞伎 夜の部」

  • 松竹座 1回10列15番
  • 「神霊矢口渡」

うっかりしていて先日買った筋書を持参するのを忘れてしまい、いつもは筋書を熟読してから歌舞伎の場合は舞台を拝見することにしている私としてはちょっと不安・・・と思いながら見始めましたが、いやー面白かったです。話の筋もわかりやすくて助かった。お舟ちゃんいいわあ・・・。義峯に一目惚れしちゃってあまつさえ命までかけちゃう乙女心がすごい。廻り舞台を使ってセットの奥行きをみせちゃうところとかも印象的。お舟をやったのが孝太郎さんで、ときどきほんとはっとするほど美しかった。可愛らしいしなあ。太鼓をうちならした後、柱に縋って何とも言えず哀しい笑みを浮かべて死んでいくのが切なかったです。

道行の美しさにのっけからうっとり。あまりの美しさに玉さまばっかり見てしまうよ!ほんと目のご馳走。
しかし先日、浅草で同じ演目を見てきたばかりというのもあってこれは色々興味深かった。当たり前だけど、格が違うわねえというのも正直な感想です。当たり前なんだけどねえ、やっぱり一軍と二軍くらい違うんだわああ、って思いました。だって私浅草で見たときはビタイチ涙が出なかったのに、松竹座では泣いちゃったからね。芸の力というのはおそろすぃ。
いろいろと段取りが細かいところで違うのも面白かった。仁左衛門さんの勘平は「二つ玉の場」で二発目を撃たないのね、とか。あの二発目を撃つときの所作がすごく印象に残っているので仁左衛門さんだとどうなのか見たかったのだが、これは型の違いというやつなのかしらん。
おかるの玉さまもやっぱり絶品で、別れの場面の美しくも哀しいことよ!印象的なのが、外で待っている源六に煙草盆をさしだしたあと、ゆっくり戸口を閉めるところ。戸口を閉めてしまったら別れの挨拶をしなければいけない、だから彼女は戸口を閉めてしまいたくないんだな(と、私は勝手に解釈)。締め切ってしまった瞬間のこらえるような泣き方に私の涙腺崩壊しまくり。そういう想像が自由に出来てしまうところがこのお方のすごいところだよ・・・。
仁左衛門さんの勘平もいちいち完璧、という感じで、所作ひとつ、声ひとつでここまで役の感情を伝えきるというのは凄すぎるな、と思わされました。「俺が殺したのではなかった」とおかやに言うときの顔がまたねえ・・・泣けるんだ。
おかやの竹三郎さん、定九郎の愛之助さんも印象的。定九郎は花道からの登場じゃなくて、いきなりぬっと稲藁から白い手が出てくる演出の方がいいなーとも思いましたけども。
いやあこの短い間に3つの「五・六段目」を拝見させていただくことが出来たのはほんと良い機会でした。この松竹座で真打ちを堪能させていただきました、という感じです。

  • 「春調娘七種」

六段目で集中しすぎた感情がほどよくほんわかと緩和された、和む一幕だなあという感じ。でも正直なかなかさっきの芝居から切り替えできませんで、出てきていたのは曾我兄弟だったのね、ということも後で知るシマツ。それにしても段治郎さんはオットコマエやねえ・・・。