- 作者: 鴻上尚史
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/05
- メディア: 単行本
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鴻上尚史さんの「小説」。
買って、読んできました。
冷静に一読者として読むならまあそこそこ面白いかなあというところ。
「小説」だといっても小説らしい小説ではないのだけど、ノンフィクション(例えば鴻上さんが『キッチン』に出ていたときの話とか)とフィクションが絶妙に混ざり合っているので読みやすいのは読みやすいです。
どこまでがフィクションで、どこからが違うのか、というのも面白いところではあります。
で、喉元までどっぷり第三舞台に浸かった「一ファン」としては、鴻上さんが学生運動に拘り続ける気持ちをかなり正直に書いていらっしゃるので、そのあたりが一番興味深かったところ。
私は「リンダ・リンダ」という芝居は好きですが、それはやはりブルーハーツの楽曲の力があの舞台の爽快感を支えていると思うし、そういう意味では「ブルハでミュージカルを」と思いついて実行したプロデューサー、演出家としての鴻上さんは凄いと思いますが、そこに堤防の爆破というテーマを持ってきた「脚本家」としての鴻上さんにはいまいち納得しかねるところがあるなあと思っていました。
バンドの名前に「ハラハラ時計」*1と名付けたりとか、そういう意図が申し訳ないけれど鼻につくし、逆に言えば鴻上さんはその現実での諫早湾の問題を、演劇のテーマとして昇華しきれていないという感じがどうしてもあったからです。
だから今回の「小説」も、タイトル聞いたときに「またかよ」と思ってしまったところがあって、だってヘルメットといえばもう、ねえ。
しかし、この小説の中で鴻上さんはその「学生運動に参加できなかった自分」の思いをかなり正直に吐露していて、それは凄く面白かった。
自分がその思想に共感するかどうかは別として、参加していなかった自分だからこそ、いまだに思いを燃やさずにはおれないという気持ちには、共感できる。
これを書いたことで、鴻上さんは少しは吹っ切れるところはあったのかしら。
そうだったらいいのにな、と余計な感想を抱いてしまうところが、結局ファンの甘いところなのかもしれません。