「ウーマンリブ先生」ウーマンリブ vol.10

基本的に見た芝居に引っ張られないというか、いちいち引っ張られてたらマチソワはしごとかできないわけで、なのでどんな舞台でも終わればそれはそれで気分の切り替えが普通にできるたちなんですけど、時々妙にひきずっちゃうやつがあって、これもまさにそうだった。なんか松尾さんの「業音」見たときと同じような感覚だったなー。

官能小説家の話だから、繰り広げられる下ネタ爆弾ももうあちこちにありすぎてこれがダメな人はダメだろうと思います、今回。引かれてもしょうがないわな、ってレベルの下ネタではある。私は別に、見てるうちになれるというか麻痺するというか、わりと耐性強い方なのでそれは大丈夫だったんですけど、終盤にたたみかけるように押しつけられる「作家になれなかった男」の「作品と同化して生きた人生」の業にぐったりしてしまったというか(いい意味で)、ひきずられてしまった感じがあった。人生はすべてが悪い夢、みたいな世界観は、やっぱりどこか松尾スズキさんに通じるものがあるなあとも思いつつ、そこからの脱出口が今回見えない(見せてない)あたりが、うーうーうー、なんか見終わったあとも肩になんか乗ってませんかあああ!というような引きずり方をしてしまった。

ダメだったというわけじゃなくて、むしろダメな作品だったら3秒で忘れられるので、宮藤さんすごいの書くなあ、とも思ったんだけど。

端から端までネタとしてもきっちり詰まっていて、時々妙にツボに入る台詞とかあって爆笑しっぱなし。宍戸さんの「蛾に見えますね」とか松尾さんの「こうして熱弁を奮っているのもなにかのタイミングでまた尊敬されないかなという勝負に出てるからだ」とか皆川さんの「時には父のように、時には母のように」とか。あーほかにもいっぱいあったんだけど。

大人計画は女性陣がほんと素晴らしいなっていつ見ても思うけど、今回の池津さんとかホントいい。大好きです。猫背さんの愛人ぶりもいいっす。紙ちゃんも良かったなー。古田さんはあれだ、台詞を噛みすぎです、噛みすぎですが、それでもちゃんと成立してるってのがすげーなとも思った。なんだかんだうまいから、こうまで引きずられたのは古田新太のうまさもあると思う。そしてもうどうやっても「見せてもいい裸」には戻れない時の流れの残酷さよ(笑)逆の見せ物としては成立しているとも言えるけど。

役者としての松尾さんの存在感って、やっぱ独特だなあと改めて思いました。声の張りとかね、あきらかに古田さんとぜんぜんちがって(それは他の役者さんもそうなんだけど)、だけど古田さんと同じぐらい目を離せない何かがありますよね。あと宮藤さんはひとりなんでそんな女心をくすぐる格好をしているのだ、と問いつめたくなった。ずりーよーー。