中村勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露三月大歌舞伎

  • 傾城反魂香

勘太郎さんがやった又平しか見たことなかったので、それを仁左衛門さんが、というのもだし、おとくを勘三郎さんが、というのも私は初見なのでとても楽しみにしてました。歌舞伎公演データベースで見たら(これマジちょう便利すぎるっつーか楽しすぎる)、92年の中座で仁左衛門さんと勘三郎さんの顔合わせがあったみたいです。

仁左衛門さんの又平、台詞がないときの表情も含めてまったくスキがないんだけど、そして何とも言えず魅力的なのだけど、やっぱりこの座組だと場を圧倒する貫禄があるというのが如実で、なかなか難しいものだねと思ったりしました。でもおとくと二人の場面はさすがの大顔合わせで、またおとくの勘三郎さん素晴らしいんだ!あの手水鉢の絵が抜けたと気がつくまでの緊張感の保ち方さすがでした。あの又平が握って離さない絵筆をはずしてあげるとこぐっときました。

  • 口上

先月の演舞場に続いて、という方も何人かおられる中、中村座初出演という進之介さんのご挨拶が面白かったです(笑)基本、勘三郎さんの話しかしないというある意味斬新な口上でした…最後に「そんな勘九郎名跡を襲名される、誠にめでたい」で無理矢理持っていってました(笑)続く海老蔵さんも「私も勘九郎さんを見習ってまじめに」でどっと大爆笑。仁左衛門さまは勘九郎さんについて、決して器用なタイプではないけれど人一倍の芸熱心と仰ってくださり、口上の締めに「中村屋一門、ついでに私も末永くお引き立て賜りますよう」と仰っていて勘三郎さんが笑ってらっしゃいましたです。今回の口上には笹野さんも列座されていて、大好きな「勘九郎」の名跡が戻ってくるのが嬉しいとお話しされてました。
ご自身のホームグラウンドということもあってか勘三郎さんのごあいさつも幾分砕けていて、中村座の歴史も含めてご紹介くださったのがよかったなー。仁左衛門さんはこの三月の襲名興行、わし出るで!と自ら出演を買って出てくださったとか。ほろりん。

  • 曽我綉侠御所染

初見です。平場の上手のお席で拝見していたのですが、休憩時間中にかなりしっかりとした仮花道を設置されてました(その手際の良さたるや!)。その本花と仮花とで海老蔵さんの土右衛門と勘九郎さんの五郎蔵がきりっと決めて渡り台詞を言い合う場面とか、小屋の狭さもありますけどほんとに錦絵みたいに見えましたよ。つーかマジ勘九郎さんが登場したときの私の顔のしまりのなさったらなかったね!なんでこんなカッコイイかねこの人…とニヤニヤしっぱなし。

皐月からの愛想尽かしの場面から、激昂して尺八を振りかざすあたりもよかったですが、個人的に白眉だったのは「晦日に月の出る廓も闇があるから覚えていろ」の啖呵と、そこから引っ込みまでの足捌きの美しさ!正直、お声に疲れが滲んでいるなと思う場面もそこまでいくつかあったのですが、身体のキレはまったくもって素晴らしいの一語です。

海老蔵さんもすごく神妙に演じていらっしゃったし、やっぱり華がありますよねえ。七之助さんの逢州も出てきた瞬間ぱっと花咲くような明るさがあってよかった。逢州殺しの場の二人はさすがの息の合いようでした。