「ミッション」イキウメ

  • シアタートラム L列15番
  • 作 前川知大 演出 小川絵梨子

うちの父は阪神タイガースの大ファンで、自分が夕食のあとの皿を洗うと阪神が勝つ、というようなことを一時期ちょっと真剣に考えていた節がある。それをジンクスとか験担ぎとか人は言うのかもしれませんが、でも自分が試合をするわけでもないのにジンクスも験もないだろうと言われればそりゃそうで。

アクション。リアクション。何かをしたから何かが起こる。原因と結果。因果。

話としてはとても面白く観たのですが、怜司と司朗の二人の話(会話ではなく)あたりで、怜司というキャラクターそのものがとても苦手!というほうに私の気持ちが傾きすぎてしまい、あまりフラットに観れなかったというね…心の中でどうしても怜司に一矢報いたいみたいな気持ちが強くなりすぎてしまった。反省猿。呼びかけに答えるのだ、衝動に従うのだ、無駄なことにこそ意味があるのだと言いながら、彼は意味もなく消費されていく自分というものを受け入れられない。意味もなく消費されていくものなど、見方を変えればどこにでもあるし、どこにもないのに。うーむ、やはり肩入れして考えてしまうな。

そしてそんな私の心のオアシスは清武兄ちゃんなのであった…あーもう兄ちゃんかわいい。かわいい。かわいいったらない。最後のシーンとかもう兄ちゃんかわいさのあまり、おそらく創り手のまったく意図しないところでじたばた身悶えていた私である。というように、役者よりも「その人」を見ていたなという実感があるのも、やっぱり物語の枠がしっかりしているからなんでしょうね。

兄と弟がついに対面して言葉を交わすシーン、よかったですね。最初はなんとなく「戻ってきたんだって?」とか、そんな当たり障りないところを言葉にしてしまう感じ、とてもよくわかる。その代わり、深いところに届くときは一気に届いてしまう感じも、肉親というか、家族ならではの距離感だなあと思いました。

舞台美術はじめ、スタッフワークも劇団公演らしからぬ垢抜けた感があるよなあと思いましたが、さっき当日パンフ見たら制作に中島隆裕さんのお名前があって、これあの中島さん、なんですよねきっと…。わー。なるほどそうか…となんだかひとり得心しているわたくしなのでした。