「音のいない世界で」

首藤康之近藤良平という圧倒的な身体性を持つ役者ふたり、そして松たか子長塚圭史という4人のキャスト。顔合わせだけで惹かれてしまうでしょうこれは。

大したネタバレでもないですが、一応畳んでおきます。
世界から「音」がいなくなってしまったら、というどこか童話というか、寓話的な手触りの物語で、舞台美術もどこか絵本を感じさせるような。「音」が消えたことでそれにまつわるものを思い出せなくなった若い夫婦が、世界のあちこちでいろんな人に出会う。盲人の夫婦、小鳥を飼う男、羊を飼う女、棒を振り回す男、戦争を始めようとするふたり。なんとなく「星の王子さま」も彷彿とさせる構成でした。彼らは皆、以前は「音」をよりどころにしていたけれど、その音がいなくなったことで世界との向き合い方がわからなくなっている。

それにしてもあの舞台美術すばらしかったな!あのセットの中に回り舞台を作っているのもすごいし、なにげに小鳥の仕掛け(というか、アナログなんだけど)もよかった。

ちょっと抽象的な会話が続くところもあるので、英国留学からの帰国後すぐあたりの長塚作品ぽい手触りもあるかなーと。個人的には、このメンバーならではの身体性を発揮した場面を期待していたところもあったので、そのあたりは残念ながらという感じ。

4人しか役者がいないので、他の役ももちろん兼ねるんですけれど、こういう点においては松たか子さんはさすが地力が違う感じすらしますよね(笑)首藤さんは若い夫婦の夫を演じていたんですが、やーかわいかった、よね…!松さんとふたり寄り添うシーンとかほんと胸がきゅんきゅんした。そして圭史さんと良平さんのヒョロ長兄弟は面を(面じゃないけど、のようなものを)かぶっているにも関わらずなんともいえずチャーミングでこちらも胸がきゅんきゅんしました。圭史さんやっぱり役者としてももっと舞台出てほしい。

とてもあたたかくて美しい舞台で、新年最初の観劇に相応しい舞台だったなー、とほくほく。