「ローガン」


ヒュー・ジャックマンが演じる最後のウルヴァリン。めちゃくちゃよかったです。めちゃくちゃよかったです。私X-MENの映画2本ぐらい落としてるしそこまで思い入れも深くないですが、それでもここに出てきたキャラクターと、そして出てこなかったキャラクターに思いをはせずにはいられませんでしたし、何よりもそういった思い入れのある、なしを超えた説得力のある物語に耽溺することができました。

かつておそれられたミュータントが、いまや過去の遺物となって扱われている時代のウルヴァリンと、彼が匿うプロフェッサーX。ローガンもチャールズももはや年老いていて、その能力が自分を侵し、または制御することができなくなっている。ローガンはハイヤーの運転手をして日銭を稼ぎ、“サン・シーカー”のヨットを買い、海の上でチャールズと暮らそうとしている。そこに、あるひとりの女性がローガンに助けを求めてくる。

ミュータントを結局のところ「突然変異」としてラベルを貼って片付けようとする人々と、その能力に歪んだ欲望を抱くものと、その能力ゆえに苦しむ彼らと。それでもチャールズはやっぱりチャールズで、どこかに希望を見出そうとする。だからこそ、ウェストチェスターで何があったのか、それを想像するだけでつらい。そこで失われたという人間とミュータントの命のことを思うと、胸がきゅーーーってなる。

あの家族と出会って、暫しの休息が描かれたあたりからもういやな予感しかしなくて、このあたりの緩急もほんと見事でした。関係ないけど、あのお父さん、見た瞬間にベントン先生やー!おなつかしい!ってなりましたよ。

しかし、なんといっても私がこの映画で一番胸震えたのは、この「ウルヴァリン」の物語が、X-MENのコミックスで描かれる「ウルヴァリン」の物語に支えられていくところです。ローラの言う「エデン」はコミックスの中で描かれた絵空事にすぎない、とコミックスを読んだローガンは言う。そして観客もおそらくそれが真実なのだろうと思う。ローガンは言う、「これはお話だ、本当のことじゃない、事実をもとにしてはいるが、全然ちがう、別のお話だ。」

だが、実際には、その虚構こそが彼らの命を繋ぐ。ローラを導いてきたローガンは、終盤、ローラによってエデンに導かれる。虚構が、物語が現実を超え、その先の世界を繋いでいくというこの展開!!アメコミ映画としてここまでうつくしい物語がかつてあっただろうかと思うほどです。そして最後のローラとローガンの会話…。ローガンがついに最後にして得ることのできたものに涙が止まりませんでしたし、またあそこで男の子のひとりがウルヴァリンのフィギュア持ってるのがもう…!!!どんだけ私の涙腺に蹴りを入れるんやって感じでした。

R指定ということで、残虐なシーンもありますが(とはいえ無駄に残虐なわけではない)、あの治癒能力を持つ肉体で戦い続けるということがどういうことなのか、ローラの戦い方も含めて改めて実感させられた感じです。ダフネ・キーンすごくよかったな。かっこよかった。ヒュー・ジャックマンウルヴァリンがもう見られないのは悲しいし、このあとにこの役を引き継ぐ人は大変だろうな…と思いますが、しかしこれ以上ないほどの素晴らしい幕引きだったと思います!