「八月納涼歌舞伎 第二部」

3年目になりました弥次さん喜多さん東海道中膝栗毛!今回の副題は「再伊勢参!?YJKT(またいくの こりないめんめん)」歌舞伎の副題自由だなおい。

今回は喜多さんの葬儀の場面からスタートで、なんでも高麗屋三代襲名興行に松竹座まで手伝いに出かけて女殺油地獄の油につるっと滑って打ちどころが悪くあの世行き、ってうんうん弥次さんも喜多さんもその演目出てましたよねと虚実綯交ぜになりますな。喜多さんを喪ってひたすら嘆く弥次さんに、喜多さんの思い出の縁にもういちどお伊勢参りをしてはどうかと勧める面々、喜多さんは喜多さんで成仏せずにまだ現世をうろうろしているさなか、このままいけば地獄行きのところ、大事に思う相手に「ありがとう」と感謝の言葉をもらえれば極楽への道が開ける…というご先祖さまからの言葉に従い、弥次さんのあとをふらふらついていく、という筋書き。

葬儀の場面で中車さんと七之助さんと獅童さんがこれでもか!と早替わりで弔問客として現れたり(この一瞬だけお染久松で出たりするので、贅沢の極み)、この伊勢参りへの道中で1年目の舞台となった宿屋に投宿したりするんですが、なかでも花魁道中に遭遇して完全に「籠釣瓶」のパロディになるところがすごい。なにがすごいって、猿之助さんですからね、八ツ橋ポジションの花魁(赤尾太夫)を演じるの。これはほんとうにめったに見られない。

いやこれ、怒られるかもしれないんだけどさ、赤尾太夫に入れ込んじゃう弥次さんだったり、喜多さんと「一緒に地獄に行く」と嘆く弥次さんだったりを見てて思ったんだけど、この劇中で弥次さんが考えているのは赤尾太夫のことか喜多さんのことしかないわけよ。そしてそのどっちもやってるのは猿之助さんなのよ。この感覚どこかで…はっ!これは、夢女子のそれ!とか思っちゃって本当申し訳なかった。実力と筆力のありすぎるひとが書いた壁サー新刊要素がすごいなって(お前の歪んだ心もすごいよ)。猿之助さん幸四郎さんのこと大好きすぎだろ!ってなったし、最後もさ、こういう死者を追いかけて地獄へ…っていうオルフェウス的展開だと、片方が現世にとどまるか、または双方が現世に帰還したりするのが常だけど、まさかのふたりして黄泉の国への道行きっていうね!すごい…天使ふたり(團子くんと染五郎くん)と一緒に高く舞い上がる猿之助さんと幸四郎さんをみてもう手を合わせるしかなかった(尊い…的な意味とごちそうさま…的な意味で)。

籠釣瓶のパロディだけでなく、地獄では女歌舞鬼に赤青黄鬼、大中小鬼らの踊りががっつり見られたりして、若手を見せる舞台を用意するところも猿之助さんらしさだな~と思いましたし、何より3年前と比べて團子くん染五郎くんのコンビがぐぐぐっと大人になっていて、芝居を転がす役割を担っていたのも、たった3年とはいえ歳月…!ってなっちゃうところでした。

「雨乞其角」。弥次喜多もそうでしたが、これも今をときめく若手が揃って総踊りという、青田買いが好きな人にはたまらんぜ…という演目。このひとの踊りうまいなとか、自分の好みだな…というのもピンで見るよりもわかりやすいところがあるかも。二部はそういう意味ではこれからのご贔屓を見つけるよい機会かもしれません。