「モジョ ミキボー」

  • シアタートラム B列6番
  • 脚本 オーウェン・マカファーティ 演出 鵜山仁

今回が再再演になるんですかね、以前からタイトルは耳にしたことがあったんですが、この夏に観た「チック」がすごく良くて、その時にたしか「モジョミキボー」もいいですよ、再演しますよって話題を見かけた気がします。

チックの舞台はドイツ、モジョミキボーはアイルランド、どちらも中心になるのは少年二人…なんだけど、物語の手触りとしてはかなり違う作品。モジョミキボーにはカトリックプロテスタントという、アイルランド紛争の深い根がびっしりとはりついており、その根っこは少年時代の甘やかな連帯、というようなものをも覆い隠してしまう力がある。

登場人物すべてをお二人が演じられるんですが、その「役」を象徴する小道具(スカーフとか、エプロンとか、帽子とか)を効果的に使うっていう手法と、逆に声色と姿勢、表情だけで役替わりを見せていくのも、両方堪能できてすごかった。こういうときって、自分の担当の役同士が会話するときは対話の片方を一人が喋る(言ってみればエアー相手役状態)ことで表現したりするけど、対話も全編シッカリ喋らすので、これは石橋さんと浅野さんのまさに磨き上げられた匠の技という感じ。当たり前だけど、今どっち?みたいなことは一切起こらない。さすがです。

物語のかなり根幹の部分に、映画「明日に向かって撃て!」が関連してて、有名なシーンを再現してくださった映像が流れる(むちゃくちゃ笑いました)んだけど、これは映画見といてよかった、見といてっていうか私もむちゃくちゃ大好きな映画なので、モジョとミキボーがブッチとサンダンスに憧れて、それをなぞろうとする心がすんなりつかめたのは大きかったなーと思います。ラストシーンなんてね、まさにそのまんまですもんね。

セットのミニマムな書き込みと、最小限で最大の効果を狙う大道具、照明も印象的でした。なにより再演を重ねて石橋さんと浅野さんのふたりの練り上げられた演技が見事で、いい芝居を観たなあという気持ちにさせてくれる作品でした。