「阿修羅のごとく」

向田邦子の手によるドラマ脚本を舞台化。脚色・演出家の選球眼といい、魅力的なキャスト陣といい、これはツボを突かれるプロデュース公演やで~!と第一報でなるやつ。

今回客席を四方囲みにするというアナウンスがされていて、入場してみたら思わず膝を打つというか、もうそこで先制点みたいな感じでしたね。舞台上部に相撲の吊り屋根。これだけで、何を見立てているかを瞬時に観客にわからせる。通常吊り屋根の四方には房が下がっており、それぞれ青・赤・白・黒が4つの季節とそれぞれの神(青龍・朱雀・白虎・玄武)を表すというのを考えると、まさにこの舞台にうってつけ。

ブロンテの若草物語がそうであるように、「四姉妹」というとどうしてもキャラ立てがまったく違う4人を並べる形になりがちだし、今作も一見そう見えるんだけど、この見立てに乗っかると、綱子、巻子、滝子そして咲子は、それぞれ人生の春夏秋冬を現しているようで、そうなるとある意味ひとりの人間におとずれる人生の4つの季節、みたいな見方もできるところがむたくた面白い。これらが舞台装置ひとつでいくらでも掘り下げられるのはまさに演劇の醍醐味といったところ。

舞台上に電話を配置したのもよかったなー。電話という小道具は実のところ諸刃の剣というか、携帯に慣れ切った今では、見せ方使い方をちょっと間違えると同時代感が一気に薄れちゃうんですよね。でもこの舞台における電話は、もちろん黒電話だったり公衆電話だったり、昭和のものではあるのに、置き方と見せ方がうまいので全然古さを感じさせない。綱子と巻子がそれぞれの家の電話を取りながら舞台上で向かい合って話すのとかね、まさにセンスだよなあ。それで台詞が向田邦子の台詞なんだから、これ面白くないわけないのよって感じでしたよね。

4人の姉妹がそれぞれの役を演じつつ、そして男性陣2名はそれぞれの相手役をかわるがわる演じつつ、4姉妹は別役でもちらっと顔を出すのもコンパクトで、でも役者のしどころでもあって、楽しかったな~。中でも、安藤玉恵さんの滝子ともう一役(咲子の彼氏の浮気相手)の振り幅よ。あの瞬間に見せる肉体そのもののだらしなさ、みたいなとこを表現できちゃうのすごすぎる。岩井秀人さんも、方向としては真逆のキャラクターなのに、圧をかけるのもかけられるのもうまいのがすごいよ。安藤玉恵さんと岩井さんの消火活動からの情熱のダンスが最高過ぎて、こういう芝居が私を演劇好きにしたんだったそうだった!木野花さんって限りなく私の原点に近いところにいるんだったそうだった!ってマスクの下で顔のニヤケが止まんなかったっすよ。

ほんと全員がそれぞれ別ベクトルの魅力があって、それがぶつかり合ってて、演出も限りなく自分のツボで、ほんと観ている間むちゃくちゃ楽しかったですね。席位置的に、夏帆さんがラーメン食べる場面を間近でガン見したのもあったのか、帰りにラーメン食べて帰りました。引っ張られすぎや!