「平成中村座十一月大歌舞伎 昼の部」

「寿曽我対面」。楽しかった!何が楽しかったかって、「鎌倉殿の13人」効果抜群というか、工藤祐経って聞いて自分の脳内に具体的なイメージが出てくるのがもうまず面白い。そういう意味では各人のあの時代における立ち位置がぐんぐん脳内に沁みこんでくるし、巻狩で…っていうのも巻狩のイメージがこっちにできあがってるし、いやマジで松竹さん!この鎌倉時代チャンスにゆかりの演目バンバンかけなはれや!と浪花商人になってしまいそう。役者も全体的に若くて次世代感が強く、こういうのを見ておくことがのちのち語り草になったりするんよな~と思いながら観ておりました。

「舞妓の花宴」。七之助さんのソロ(ソロ言うな)。美しいし完全に目の保養でしかなかった。とはいえ個人的にはそれほどぐっとくるところがなく。もうちょっと毒のあるほうが好み。

「魚屋宗五郎」。わー、なんと初見です。たぶん。こんな有名な演目なのに。勘三郎さんがおやりになったとき見てないんだなー。
不義の罪を問われお手討ちになったという妹の死を悼むなか、お屋敷から同輩の腰元がお悔やみにやってきて、そこで死の真相を語るところから急速に物語が加速していきます。ここでおなぎが語るお蔦さんの最後が、まあまあにすごい。吊るして拷問して斬ったとか言ってない!?大丈夫!?どんなバイオレンスよ…さすがに皿屋敷がベースになってるだけあるわ…。

禁酒していた宗五郎は妹の最後のあまりの無残さに、酒でも飲まなきゃやってられねえ!と禁酒の誓いを破るわけですが、酒を飲まなきゃ立派な人なのにね!と散々繰り返される宗五郎がここでぐいぐいと(文字通りぐいぐいと)盃を開けていくのがある意味一番の見せ場かもしれない。勘九郎さん、目の芝居もすごいし「これ絶対飲ませたらアカンやつ」な顔してるし、いよいよ暴れ出した時のどうにも止まらない勢いも含めて実によかったです。あの場面ほんと、役者さんならみんなやりたくなるとこなんじゃないかなー。いろんなエッセンスがつまってるよね。
お屋敷についてからの暴れっぷり語りっぷりも実によく、贔屓を堪能した…!という気持ちになった一幕でした。