- シアタートラム E列11番
- 脚本 古川健 演出 日澤雄介
劇団チョコレートケーキ新作。いつもノンフィクションに足場を置いた硬派な作品を創っている印象がある劇団ですが、今回は特撮制作会社を題材にしていて、タイトルもいつもの劇チョコとは一味違う感じ。東京公演しかなかったので(かなしみ)頑張って足を運んできましたよっと
とある怪獣もの特撮テレビシリーズを制作している会社が、予算削減から「怪獣が登場しない回」を制作することになり、監督が白羽の矢を立てたのが学生時代の知り合いの脚本家。彼は慣れない特撮の世界に戸惑いながらも、制約の中で自身の「疑問」をぶつけるような脚本を仕上げていくが…というあらすじ。
フィクションではあるけれど、実際の世界に題材を得ており、そしていつもとは一風違ったように見えてやはり劇チョコだなという作品。テレビ制作というもののなかで暗黙の了解で触れずにいるもの、タブー視されているものに触れてみようぜ、語っていこうぜ、という作品なので、むしろいつもの作品よりも今の観客に直接刺さる部分は多いかもしれないな。
感心したのは、「差別ってなんで起こるんでしょうね」というようなセリフが頻発するのだが(若手売り出し中の役者が悪意はないが無頓着、という位置づけのため)、下手するとこうした応酬は高校の演劇鑑賞会のような空気になってしまうところをそうは感じさせないところかな。そう感じさせないでいられるのは、つとめて大義を語ろうとせず、登場人物それぞれの個人が得た自分の中での正義を重んじようとしているからだなと思った。パーソナルな部分を失わないからこそお題目だけの芝居に陥らずにいられるというか。
扱っている問題も国籍、性差、性的嗜好と多岐に及んでおり、劇チョコらしい意欲を感じたものの、もう少し的を絞ってもよかったのかもしれないという気はしました。最後ふわっと気持ちが軽くなるラストだったのもちょっと意外。個人的には好きですが。